境界確定の証拠方法には何があるか

 境界確定訴訟を提起することになり、準備にとりかかっておりますが、証拠方法としてどんなものがあるでしょうか。職権による証拠調べが行われることはないでしょうか。

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 境界確定訴訟は、本来非訟事件であるにもかかわらず、非訟事件としてではなく、訴訟事件として(民事訴訟法の定める手続によって)行われるところに特色があります。民事訴訟法の手続に従って行われますから、証拠方法、証拠調手続ともに、通常の民事訴訟と何ら変わるところはありません。証拠方法には、証人、当事者、鑑定、書証、検証等があり、当事者は、これらの証拠方法につき、証拠の申出をして取調を受けることになります。実際上の必要性と境界確定訴訟が非訟事件の性格を有していることから、職権証拠調を肯定する見解もありますが、通説は、非訟事件であるにもかかわらず、特に民事訴訟手続によって行われていることを理由に、職権証拠調はできないとしています。したがって、明文で許されている調査の嘱託と当事者尋問以外、職権証拠調はできません。
 [境界確定訴訟の特色]
 境界確定訴訟が扱う境界は、公法上の境界です。これは、私人がその意思で処分したり変更したりすることはできません。したがって、裁判所は、当事者の申立てに拘束されることはありませんし、証拠がないとして請求を棄却することも許されません。必ず境界を確定する判決をしなければなりません。しかも、判決をするための規準となる実体法規が存在しないのです。
 私人間の権利ないし法律関係に争いが生じた場合、当事者の主張が証拠によって認められるか否かを認定し、認定された事実に、規準となる実体法規を適用した結果としての判断を判決として示して紛争を解決するのが民事訴訟です。
 これと境界確定訴訟とを比較すれば、境界確定訴訟が訴訟とは異なる性格を持っていることがわかります。境界確定訴訟は、境界が不分明となった結果、その所在について紛争がある場合に、裁判所が、当事者の主張とは無関係に、客観的合理的見地から、これを確定する手続です。当事者間の境界紛争が解決するのは、当事者の主張が認められたからではなく、裁判所が独自の立場から確定した結果にすぎません。裁判所の行うこのような作用は、むしろ行政的作用です。裁判所が行政的作用によって紛争を解決する事件を非訟事件といいます。境界確定訴訟は、本来、非訟事件としての性格を有しているのです。
 非訟事件の手続を行う法律として、非訟事件手続法があります。ところが、境界確定訴訟は、旧々民事訴訟法二二条一項の「経界ノ訴」裁判所構成法一四条二号の「不動産ノ経界ノミニ関スル訴訟」による訴訟として、非訟事件としてではなく、(いねば手続を借りて)訴訟事件とされてきました(二つの法は、いずれも昭和二二年に廃止されています)。実質的には非訟事件だが形式としては訴訟事件として手続が行われているので、境界確定訴訟の性質を指して、形式的形成訴訟といいます。形式的形成訴訟の例としては、共有物分割の訴え(民二五八条)や父を定める訴え(民七七三条、人訴二七条)があります。
 [職権証拠調]
 境界確定訴訟は、実質は非訟事件であるにもかかわらず、形式上は訴訟事件として手続が行われるのです。したがって、手続に関して適用される法律は、民事訴訟法です。訴訟ですので、職権証拠調は、明文で許されている調査の嘱託(民訴一八六条・旧民訴二六二条)、当事者尋問(民訴二〇七条一項・旧民訴二二六条)以外は許されません。
 ところで、一の特色で述べたように、境界確定訴訟では、裁判所は、当事者が証拠を提出しないからといって請求を棄却することはできず、必ず境界を確定する判決をしなければならないのです。ところが、当事者が証拠を提出しなければ、裁判所は、資料が得られず判断に窮することになります。境界を客観的合理的に定めるのですから、その性格上、精密な判断が要求されます。したがって、明文上職権ですることが許されている調査の嘱託や当事者の尋問だけでは、十分な資料が得られない場合のほうが多いでしょう。そこで、境界確定訴訟の対象が公法上の境界であること、境界確定訴訟が本来非訟事件の性質を有していることを考慮して、例外的、補充的には、職権証拠調をすることも許されるとの見解もあります。
 しかし、通説は、前に述べましたとおり、職権証拠調はできないとしています。それは、境界確定訴訟が本来非訟事件であるにもかかわらず、訴訟事件として、訴訟手続によって行われているのは、最も利害関係の深い当事者に立証活動をさせるのが、客観的合理的に境界を確定させる目的にかなうからで、ほとんどあり得ない例外的事態のために、明文もないのに、職権証拠調を認める必要はないということになります。
 ただし、職権証拠調を肯定する見解も、これは例外的、補充的なものとしていますので、当事者が立証活動をしない場合には、両説いずれによっても、裁判所は、まず釈明によって立証を促します。また釈明処分による検証(民訴一五一条一項五号・旧民訴一三一条一項四号)によって現況を把握しますから、実質的にも差異はほとんどなくなるでしょう。
 [証拠方法の概要]
 境界確定訴訟も通常の訴訟と同じ手続で行われるのですから、証拠方法も、通常の訴訟と同じです。証人(民訴一九〇条・旧民訴二七一条)、鑑定(民訴二一六条・旧民訴三〇一条)、書証(民訴二一九条・旧民訴三一一条)、検証(民訴規一五〇条・旧民訴三三三条)、当事者(民訴二〇七条一項)等について証拠の申出をして取調べを受けます。
 各証拠方法の概要については次のとおりです。
(一)検証
 現状を把握するために行われることが多いようです。
(二)鑑定
 境界確定には専門知識を要しますので、鑑定は重要な証拠方法です。
(三)書証
 測量図、公図、絵図、写真等がその例です。
(四)証人
 証人に適する人物としては、測量者、精通者があります。七三三頁の人証法を参照してください。

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