公図はどの程度の証明力を有するか

 境界確定訴訟で、公図は、どのうよな場合に、どの程度の証明力が認められるのでしょうか。

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 距離や角度、面積のような定量的な事項については正確さを期待できませんが、境界が直線か曲線か、どの方向かというような定性的な事項については比較的正確であると認められ、境界確定に当たって重要な資料となります。公図上の境界が土地の現状、特に不動と認められる地形と一致する場合は強い証明力が認められています。
 また、鑑定の一手法に公図分析法があり、これによって間接的な証明力もあります。
 [公図の意義]
 公図とは、土地台帳の附属地図(旧土地台帳法施行細則二条)のことで、明治六年に地価台帳が施行されて、区画と地番とを明らかにするために作成された図面が、法制の改正とともに順次引き誰かれ、現在は、不動産登記事務取扱手続準則二九条で、不動産登記法一七条の地図に準ずる図面として法務局に備え付けられている図面です。
 [公図の証明力ー般]
 公図の証明力の全体的な意義については、
 1. 公図は区画と地番とを明らかにするもので、土地台帳法施行細則第二条によって土地台帳に附属されたものであるが、実際の作成は明治六年地価台帳制を施行した当時、数年かかって作成された図面が引継がれたものであることは裁判所に顕著な事実であり、この図面は測量技術の不完全から現在不正確な面もみられるが、境界が直線であるか、そうでないか、或は曲線か、どの方向なのか、というような地形的のものは比較的正確で、距離角度などの点に不正確さが強く表われているといわれている(山梨簡判昭五三・五・三〇判時九三七・一〇〇)。
 2. 公図は土地台帳の附属地図で、区割と地番を明らかにするために作成されたものであるから、面積の測定については必ずしも正確に現地の面積を反映しているとはいえないにしても、境界が直線であるか否か、あるいはいかなる線でどの方向に画されるかというような地形的なものは比較的正確なものということができるから、境界確定にあたって重要な資料と考えられる(東京地判昭回九・六・二回判時七六二・四八)。と理解されています。
 つまり、公図は、距離牛角度、あるいは面積のような定量的な事項については正確さを期待できないが、境界が直線か曲線か、どの方向か等の定性的な事項については比較的正確であるから、境界確定に当たって重要な資料であるとされているのです。
 このような理解から、
 3. 公図は実測図と異り、線の長さ、面積について正確を期待できないことはいうまでもないが、各筆の土地のおうよその位置関係、境界線のおうよその形状については、その特徴をかなり忠実に表現しているのが通常であるから、原判決は右甲第五号証を事実認定の用に併しながら、しかも後背地境界線を単純な一本の直線であると認定する以上、特段の理由を附すべきが当然であると思われるのに、これを附していないのであって、原判決には経験則違背または理由不備の違法がある(東京高判昭五三・一二・二六判時九二八・六六)。とされます。
 公図を証拠の一つとして採用したときは、境界の形状について公図と違う認定をするには特段の理由を付すべきで、これを付さないときは経験則違反又は理由不備の違法があるとされるのです。
 公図は、以上のように境界確定訴訟で重要な資料となるのですが、公図のみによって境界が確定できるものではありません。1.の判例は「土地の現況、その他境界確定に当って実際上重視される客観的な資料が存在する場合に、たまたま一方の主張する境界線の位置が公図上の筆界線の位置に類似するというだけで、他の資料か二切無して直ちに一方の主張を正当とみなすことは到底妥当といいがたい。」と述べ、
 4. ところで、一般に「公図」と呼ばれている旧土地台帳附属地図は、地租徴収の資料として作成されたという沿革、作成当時における測量技術の未熟等にかんがみ、不正確なものであることはおよそ否定し難く、それ自体では係争土地の位置及び区画を現地において具体的に特定する現地復元力を有しないものとされている。そこで、訴訟の実際においては、かかる公図に加えて、筆界杭、畦畔等の物的証拠及び古老や近隣の人の証言等の人的証拠によって、当該土地の位置や区域を特定しているのであるが、このことは裏を返せば、公図の証拠価値はかかる物的、人的証拠によってはじめて決まるものであり、かかる物的、人的証拠がないときは、公図のみでは何の役にも立たず、率証としてはもちろんのこと反証としてもその証拠価値を認めることができないことにならざるを得ない(証言や本人供述であれば経験則に照らしてそれ自体の証拠価値を判断することができるのであるが、公図にあってはそれができないのである)。
 右に説示したことは、本件におけるように甲地と乙地との間に丙地が割って入っているかどうかという複数の土地相互間の位置関係についても、何ら異なるところはない(かような位置関係については話はまた別だ、という理由を見い出すことができない)。公図としてそれなりのものがあり、これには丙地が割って入った形で画かれていても、現地としては甲、乙画地が相隣接しているということで長期間安定している場合には、その公図が果して三つの土地の当初の実態に即して作成されたものであるのかという疑問を生じ、長年月にわたって安定している状況を、公図とは違うという理由だけで変更することはできず、結局のところは、公図以外の物的・人的証拠によって三つの土地相互の位置関係を認定するほかないのである(東京高判昭六二・八・三一判時一二五一・一〇三)。との判例もあります。
 他の資料との総合判断が必要なのです。
 [定性的事項]
 公図は、まず現況と対比されます。このようにして、「公図と現況を対照して境界をみる場合は、両者が一致するような線が境界としてより合理性がある。とされています。その際、
 5. 公図と雖もその精度如何により直ちに現地を検出することが困難な場合もあるが、公道等は比較的良好な精度を保つのが通例であり、甲第五号証の公図も、長久保山道とこれより分岐する小径との分岐点を基準に現地と対照すれば、大体現地の地形と一致し、比較的良精度と認められるというのであるから、右分岐点より以北に位する本作画他の位置、境界を判定するには、原則として右関係部分につき良精度と認められる公図と対照してこれを定めるのが相当である(名古屋高判竪ニニ・七・一三判時一二三・一三)。
 6. 右図面は、当時の測量技術の水準が、現在に比し、相当粗略なものであることは否めぬにしても測量対象である本件口の土地の形状や隣接土地との配列関係等の概略は十分示しており、これら土地の形状などからみると(公図の境界線に従った主張線が境界と推定される。)(那覇地判昭五二・三・三〇判時八六五・八四)。というように、地形の現況、特に、不動と認められる公道平水路の地形と一致するような場合は強い証明力が認められます。
 遂に、
 7. また右公図は六〇〇分の一の縮尺によるものとされる方位角、距離等の記載のないきわめて小さな縮尺図であって、これに従って算出される面積は全体に実地より小さく、殊に東西両側の公道及びこれに洽う水路の方向その他において相当実状と相違していることから見て、公図自体が精密なものとは認められないことを考慮すれば、(公図から算出される地積を境界確定の資料とできない。)(東京高判昭四一・二・二八東高民報一七・一一ニ・一五)。
 8. 前記公図の民有地国有地の境界線は極めて単純であって、前記実測図A、実測図B、乙第四号証のいずれとも形状において相当に異なっており、公図どおりの線を現地に当てはめるとどうなるか不明であるうえに後記白の事実を考えれば、本件においては直接これに依拠しがたい(広島地呉支判昭五〇・六・二七訟月二一・八・一五六九)。
 というように、現地との関係が不明な場合、特に、公道や水路等の不動と認められる地形と相違がある場合は証明力は極めて弱くなります。
 [定量的事項]
 公図は、1.、2.の判例が示すような事情から距離牛角度のような定量的な事項については正確性を期待できないと一般的に理解され、また現実にも、7.の判例のように、公図に基づいて算出された定量的な資料では実状と相当に反してしまう場合が多いようです。

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