買った土地が市道になっているが使用できるか

 私は、Aさんから土地を買い、代金の支払と引換えに所有権移転登記を了しましたが、この土地は、実は数十年前に、甲市がAさんから寄付を受け、甲市の道敷地(道路法上の道路)になっていることがわかりました。
 私は、この土地を自己使用したいのですができるでしょうか。そのため、私は甲市に対して、この土地を明け渡してほしいといえるでしょうか。
 また、私が使えなかった間の、損害賠償を求めることができるでしょうか。

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 残念ですが、あなたは、購入した土地を自己使用することはできません。また、あなたは甲市に対して、土地の明渡しを求めることも、損害賠償を請求することもできません。
 あなたと甲市とは、いわゆる二重譲渡の関係になりますから、購入した土地の所有権は、早く所有権の移転登記をされたあなたに帰属することになりますが、本問の場合は、道路法四条のいわゆる公用制限(私権行使の制限)の規定が適用されるため、自己使用ができないのです。また、あなたは甲市に対し、土地の明渡しも、損害賠償の請求もいずれも求めることができません。
 [所有権の帰属]
 不動産が二重に譲渡された場合、その所有権の帰属の優劣は、一般には、所有権移転登記の先後によって決せられます(民一七七条)。
 しかし、国や公共団体が一定の公共目的で不動産を購入する場合には、民法一七七条の規定は適用されないとする考え方もあり、この点、従来から争いがありました。公所有権説と私所有権説とがそれです。
(一)公所有権説
 公所有権説は、同率公共団体が道踏歌を構成する土地を取得する場合は、民浩一七七条の適用がなく、国や公共団体は、登記を経なくてもその所有権を第三者に主張しうるという考え方です。
 この考え方は、国又は公共団体に属する所有権は、単に私人と同様の手段をもって物を支配しうるに止まらず、国又は公共団体に特有な公の目的のために物を支配しうることをその内容とするものであるから、その所有権の効果が公の目的のための物の支配として現われる限度において、所有権は公権たる性質を有するというものです。
(二)私所有権説
 私所有権説は、道路敷地となる土地(公物)であっても、私有財産の目的となりうるとする考え方です。
 この考え方は、公法的支配と私法的規律との調和を、所有権と管理権とを分離することによって図り、公物についても、私所有権を認めながら、その物が行政の目的に供される結果、その目的を達成するための機能である公物の管理権に基づいて、一定の範囲で、私法の適用を排除し、私権を制限するわけです。
(三)本問の場合
 公所有権説は、現在ではほとんど支持されていません。判例も通説も、私所有権説によっています。ですから、あなたの場合も、当該土地の所有権は、先に移転登記を了したあなたに帰属することになります。
 [道路法上の道路開設手続]
(一)道路開設手続の概要
 まず、道路法所定の手続により、路線の指定又は認定をし(道路五条・七条・八条・九条)、つぎに、道路管理者が道路の区域決定をし(道路一八条一項)、その敷地の上に所有権その他の権原を取得し、更に、基準に則した道路工事をなし、その後、供用開始手続をします(道路一八条二項)。
 ですから、道路法上の道路といえるためには、基準に則した道路としての構造形態を具備すること、供用開始行為即ち道路としての利用に供するという意思表示をすること、及び道路敷地の使用権原を取得することが必要です。
(二)使用権原の取得
 使用権原の取得の態様としては、所有権の取得、地上権等用益物権の取得、賃借権・使用借権等の債権の取得等が考えられます。
 同率公共団体等の道路主体が、使用権原を取得しないで供用開始行為をしても、使用権原の具備が供用開始行為の前提ですから、その供用開始行為は無効と考えられています(最判昭四四・一二・四民集二三・一二・二四〇七、東京地判昭四七・一二・二五判タ二七八・三一)。それは、私人の財産権の対象となっている土地を、そのまま道路として成立させて、財産権の行使を困難若しくは不能ならしめることは、法律の規定に基づかずして私人の財産権を奪う結果となり、憲法の定める財産権保護の原則上許されないからです(憲二九条)。
 相当古い時代に供用開始された道路が、現在も多く存在していますが、その道踏歌が私有他の場合には、上地と称する寄付や無償使用の承諾によって、使用権原を取得し供用開始をなしたものがほとんどであって、当初から全く無権原で供用開始をするようなことは、ごくごくまれのことだと思われます。
 下級審の判例ですが、使用権原に開する契約の成立が直接立証できなくても、諸般の事情を考慮して、使用権原を認定しているものがあります。これらは、全く無権限で私人の所有地を、道路敷地に使用することは通常考えられないことを踏まえて、近傍の同種のケース、分筆・地目変更の経緯、永年の黙認等の事情の立証により、使用権原の設定があったものと認定するものです(東京地判昭三八・八・二二、東京地判昭四囲・六・二〇)。
 しかし、もし使用権原が認定されない場合には、供用開始行為が無効となり、当該敷地部分は道路法上の道路でなくなってしまいます。
(三)本問の場合
 甲市は、Aさんより寄付を受け使用権原を取得しています(ただ所有権移転登記を了していなかったためその所有権の取得をあなたに対抗できないだけです)。また、甲市は適法に道路法開設の手続を経ています。
 したがって、あなたが購入した土地は、道路法上の道路敷地ということになります。
 [道路法四条の公用制限]
(一)道路法四条
 道路法四条は、「道路を構成する敷地、支壁その他の物件については、私権を行使することはできない。但し、所有権を移転し、又は抵当権を設定し、若しくは移転することを妨げない。」と規定しています。
 したがって、道路敷地、支壁等を譲渡したり、道路敷地に抵当権を設定したり、その抵当権を移転したりすることは、自由にできますが、それ以外の私権の行使は制限されることになります。
 ですから、道路敷地の明渡しを求めたり、損害賠償を請求したりすることは、できなくなるのです。これを、道路法四条による公用制限(私権制限)といいます。
(二)公用制限の根拠
 道路法四条の公用制限(私権行使の制限)は、道路敷地の権原に基づいて発生するのではなく、道路敷地が公の用に供された結果、あらたに発生するものと考えられています(最判昭四四・一二・四民集二三・ー二・二四〇七)。
 [結論]
 甲市は、当該敷地の取得をあなたに対抗できなくても、いったん適法に供用開始手続がなされた以上、道路の供用廃止がなされるまでは、道路法四条所定の公用制限が存続することになります。
 あなたは、追跡法四条の制限が加わった所有権を取得したことになります。ですから、あなたは甲市に対し、所有権に基づく妨害排除請求や、土地明渡請求はできませんし、使用収益できない分の損害賠償請求もできません。
 供用廃止を待つにしても、いつのことになるのかわかりませんので、あなたとしては、甲市に当該道路敷地を買ってもらうようにされたらどうでしょうか。
 甲市としては、あなたから道路敷地を買い取る義務はありませんが、甲市がもし買うとすれば、その価格は、追跡法四条の公用制限のついた上地ですので、更地価格の一割程度かせいぜい二割程度までと思われます。

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