池や溝は境界線からどれだけ離せばよいか

 庭に池を作りたいと思っています。池の水は溝を通して流すつもりですが、このように池や溝を作る場合、隣地との境界線からどのくらい離せばよいでしょうか。また、浄化槽を設置する場合はどうでしょうか。

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 池を作るには、隣地との境界線から一メートル離す必要があり、排水のための溝は、隣地から、溝の深さの半分以上(但し、溝の深さがニメートルを超える場合は、一メートルでよい)の距離を離す必要があります。
 浄化槽については、法令に基づいた構造を備え、汚水等のしみ出る恐れのないものは、特に距離をおく必要はありませんが、そうでないものは一メートル以上の距離をおく必要があります。
 [池などに関する民法の規定]
 民法二三七条一項は、「井戸・用水溜・下水溜又は肥料溜を穿っには、境界線よりニメートル以上、池・地雷(ちこう)・厠坑(しこう)を穿つには、一メートル以上の距離を存することを要す」と規定しています。
 これらの規定の立法趣旨は、穴を掘ると土砂崩壊のおそれがあり、また、掘った穴に水を溜めると隣地に没瀬するおそれがあるので、隣地にそれらの危害を加えることがないように、最低限の距離保持義務を設けた、というものです。
 井戸・用水溜・下水溜・肥料溜の場合と、池・地雷・厠坑の場合で保持する距離が違うのは、土砂崩壊・水没漏の危険の程度に差があるからです。
 すなわち、井戸は深く掘るために土砂崩壊のおそれが大きく、用水溜・下水溜・肥料溜は一般に水の量が多いために、浅瀬のおそれが大きくなりますので、ニメートルとされています。これに対して、池・地雷・厠坑の場合は、通常さほど深く掘るものではなく、また、入れる水の量もそれほど多くはないので、土砂崩壊・水没漏のおそれも少ないと考えられ、一メートルとされているのです。
 以上から、あなたが池を設置する場合には、隣地境界線から一メートルの距離を置く必要があります。
 [浄化槽の場合]
 浄化槽は、一見、肥料溜又は厠坑にあたるように見えます。
 ところが、浄化槽については、法令に基づいた構造を備え、汚水等の参出する虞れのないものは、民法二三七条の肥料溜・厠坑と同視することはできない、とする判例があります(東京高判昭五〇・八・二八判タ三三三・二一一)。したがって、右の要件にあてはまるものは、距離を置く必要はない、ということになります。
 そうでないものは、規模に応じて、肥料溜又は厠坑と同じく、ニメートル又は、一メートルの距離を置く必要があります。
 [溝などに関する民法の規定]
 民法二三七条二項は、「水桶を埋め、又は溝渠(こうきよ)を穿つには、境界線より、その深さの半分以上の距離を存することを要す。ただし、一メートルを超えることを要せず」と規定しています。
 この規定の立法趣旨は、水桶・溝渠の穿掘による土砂崩壊・水浸漏の危険は、水桶・溝渠の深さに応じて生ずると考えられるから、その深さの半分以上の距離保持義務を設けた、と言うものです。ただし、深さの半分が一メートルを超えることとなる場合(すなわち深さが二メートルを超える場合)は、他・地宮・厠坑(民二三七条一項)との均衡上、一メートルの距離を置けば良いとされたわけです。
 あなたが設置する他の排水用の溝は、右の「溝渠」に該当しますので、右に述べたところにしたがって、隣地境界線から、深さがニメートル以下の場合はその深さの半分、深さがニメートルを超える場合は一メートルの、距離を置く必要があります。
 [例外となる場合]
 民法二三七条に規定された距離保持義務に例外はあるでしょうか。
 (一)別段の合意がある場合
 まず、隣地所有者との間で、民法二三七条と異なる合意をした場合は、同条所定の距離保持義務を守る必要はありません。民法二三七条を含む相隣関係の規定は任意規定(公の秩序に関せざる規定)とされ、当事者が任意規定と異なる合意をすれば、その合意の方が優先する(民九一条)とされているからです。
 (二)異なる慣習がある場合
 民法二三七条と異なる慣習がある場合はどうでしょうか。
 民法二三七条には、民法二三四条(建物建築の場合における距離保持義務)に対する民法二三六条(前二条と異なる慣習がある場合はこれに従う)のような、法の規定と異なる慣習がある場合に慣習が優先することを明言する規定がありません。
 しかし、一般には、民法二三七条の場合も、同様に解するべきだとされています。
 理由は、民法九二条により、「法令中の公の秩序に関せざる規定に異なりたる慣習ある場合において、法律行為の当事者がこれによる意思を有するものと認むべきときは、その慣習に従う」と規定されていることに求めるのが、妥当であろうと思われます。
 [違反の場合の効果]
 民法二三七条に違反した場合はどうなるでしょうか。
 民法二三七条には、民法二三四条二項(建物建築の際の距離保持義務違反の建築物に対する廃止・変更請求は、建築着手から一年以内で、かっ、建築工事完成前に限られる)のような制限規定がありません。これは、民法二三七条の工作物は軽微なものであって、特にその廃止・変更を制約する必要がないと考えられたからです。
 したがって、隣地所有者は、民法二三七条違反の工作物に対しては、いつでも廃止又は変更を求めることができます。
 [損害賠償について]
 民法二三七条所定の工作物の設置によって、隣地所有者に実損害が生じた場合には、隣地所有者は損害賠償請求することができます。
 この場合、損害賠償請求できるのは、民法二三七条に違反した工作物に限られる訳ではない、ということに注意する必要があります。
 民法二三七条は、最低限の距離保持義務を定めただけであって、これを守れば隣地に損害が生じても免責するというような効果をもっものではありません。民法二三七条の距離保持義務を守っている工作物は、廃止・変更請求をされないだけで、実際に隣地に損害を与えたら、それを賠償しなければならないのです。

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