通行地役権を設定するには

 袋地を購入したので隣地の所有者との間で通行地役権を設定したいと思います。どのようにしたらよいでしょうか。

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 通行地役権設定契約は、あなたと隣地所有者との間の合意で締結されますが、内容を明確にする意味からもまた後日の紛争を回避する意味からも、その内容を書面化しておくとよいでしょう。
 また、通行地役権の取得を第三者に対抗するために地役権設定登記もあわせてしておくべきです。
 [通行地役権の意義]
 地役権は、特定の土地(要役地)の便益のために、他人の土地(承役地)を利用できる物権であり(民ニ八〇条)、そのうち他人の土地を通行できる内容の地役権を通行地役権といいます。
 [通行地役権設定契約]
 袋地を購入した者は、法定通行権である囲親達通行権を取得しますが(民二一〇条)、なお隣地の所有者との間で、約定通行権である通行地役権を設定することもできます。
 隣地所有者との間で通行地役権設定の合意ができた場合は、必ずしもその内容を書面にしなくても通行地役権は口約束だけで有効に成立します。しかし、後日の紛争を回避する意味からも、合意の内容は書面化しておく方がよりベターです。
 また、口約束等明示的に通行地役権設定の意思表示をしなくても、黙示的にでも通行地役権が設定されることがあります。
 なお、通行地役権は物権ですので、設定登記をしておかないと、原則として通行地役権の取得を第三者に対抗できなくなります。登記もしておかれた方がよいと思います。
 [通行地役権設定契約の内容]
 袋地を購入した者と隣地所有者との間では、おおむね次のような内容の通行地役権が設定されることになるでしょう。
(一)契約当事者
 通行地役権設定契約の当事者(一般的には、承役地の所有者と要役地の所有者)が、契約書に各自署名しその名下に捺印をします。これは、契約書の作成の真正を証明するとともに契約書の記載内容につきお互いが合意していることを証するためのものであるわけです。
(二)承役地・要役地の特定
 承役地及び要役地の特定は、各土地の所在、地番、地目、地積によってなされます。この場合、要役地は一筆の土地であることを要しますが、承役地は必ずしも一筆の土地である必要はありません。承役地のうちの一部分の範囲でもよいとされています。それは、要役他の便益に供するために承役地の全部を利用する必要がないこともあるからです。
 通行地役権は、承役地にっいては一般に通行に必要な範囲内で定められるので、その範囲を具体的に特定して記載する必要があります。承役地のうち東側長さ一〇メートル、幅三メートルの三〇平方メートルの範囲と文章で表現するだけでなく、契約書にその範囲を特定した図面を添付しておくとよいでしょう。
(三)地役権の目的
 要役地の通行の便益のために承役地に地役権を設定することを表示し、当該地役権が通行の便益のためであることを明らかにしておきます。
 「通行」あるいは「徒歩及び軽自動車による通行」と記載して、登記することはできますが、それ以上に、軽自動車の大きさや台数を限定した記載の登記はできません。
(四)地役権の存続期間
 通行地役権の存続期間は契約成立日から四〇年間である、というようにその存続期間も当事者間で決めておくとよいでしょう。
 ところで、通行地役権の存続期間を永久と定めることができるかについては争いがありますが、学者は一般に、存続期間を永久とする合意も有効であると解しています。
 所有権を制限する他物権は常に有限でなければならないとする近代法の所有権理論からすると、消極に解することも考えられますが、承役地所有者も承役地を通行することができますので、通行地役権は承役地所有者の利用権を全部奪うものではなく、その所有権を制限する程度が少ないし、また、隣地間の土地の利用の調節を目的とする制度趣旨からみても積極に(永久としてもよい)解したいと思います。
 地役権の存続期間は、不動産登記法上規定がありませんので、登記をすることができないと解されています。したがって、この見解によれば、存続期間の定めは第三者に対抗することはできないことになります。
 しかし、不動産登記法一一三条の規定は、存続期間を定めた場合には、その登記を許す趣旨であると解する立場もあります。この立場からすると、登記をすれば存続期間の定めた第三者に対抗できることになります。
(五)対価の支払
 通行地役権取得の対価を求められた場合には、その対価の支払について、毎年何円を毎年何月末日限り地役権者は承役地所有者に持参又は送金して支払う旨記載することになります。
 ただし、通行地役権の取得は必ずしも有償でなければならないわけではありませんので、対価については無償にする場合もあります。その場合、地役権者は対価支払義務を負わないことになります。
 地役権の対価を定めた場合でも、不動産登記法上対価を記載する規定がありませんので、対価を登記することはできないと解されています。したがって、対価の支払義務にっいては通行地役権設定当事者に対してのみ負担すればよいことになります。
 しかし、登記できない事項は登記なくして第三者に対抗できる(例えば入会権)こと、及び囲繞地通行権の償金は登記なくして第三者に対抗できることから、地役権の対価も登記なくして第三者に対抗できるとする見解もあります。
(六)道路敷設・修繕請求権
 承役地の所有者が地役権者に対して、道路を敷設したり敷設した道路について通行に必要な程度の修繕をしたりする義務を負う場合には、その旨を明示します。
 袋地を売却する場合には、売主が買主のためにこのような道路敷設・修繕義務を負担することがあります(道路を敷設して通行する地役権のことを継続地役権、表現地役権といい、道路を敷設せずにただ通行するだけの地役権を不継続・不表現地役権といいます。)。
 承役地の所有者がこのような義務を負担した場合は、承役地の所有者の特定承絶入にもその義務は承継されることになります(民二八六条)。特定承継人に対して右義務を主張するには承役他の所有者が負担する義務の内容を登記しておく必要があります(不登一二一条一項)。
(七)附従性排除特約
 通行地役権は、原則として、要役地(地役権を必要とする土地)の所有権に附従しております。だから、要役地の所有権が第三者に移転しますと、地役権も当然にその第三者に移転するのです。それは、地役権が要役地の便益に供するものだからです。
 しかし、特約でもって、地役権のそのような附従性を排除することもできるのです(民二八一条一項但書)。
 例えば、「地役権は要役地と共に移転せず、要役地の上の他の権利の目的とならない」旨を契約書に記載する場合がありますが、このような合意をし、しかもその旨を登記しておけば、地役権の附従性は排斥されるとともに第三者にも対抗できることになります(不登一一三条一項)。
(八)通行地役権設定契約年月日
 通行地役権設定契約を締結した年月日を記載します。
(九)印紙
 通行地役権設定契約書は印紙税法上の課税文書ではありません。
 [登記]
 通行地役権も物権ですので、その取得を第三者に対抗するためには、登記が必要です(民一七七条、不登一条四号)。例えば、通行地役権を有する者が、その登記をしておかないと、承役地を譲り受けた者に、通行地役権の取得を対抗できなくなります。ただ、さきほど述べましたように、地役権には附従性・随伴性がありますので、要役他の所有権が移転すれば、地役権も当然に移転することになります(民二八一条一項本文)。例えば、要役地を売却しますと、地役権は当然に買主に移転します。そして、買主が要役地の所有権移転登記をすれば、地役権の登記をしなくても、買主は地役権の移転を承役他の所有者に対抗できることになります。
 しかし、このような地役権の附従性・随伴性も、別段の特約で、排除することができることは、前に述べたとおりです(民二八一条一項但書、不登一一三条一項)。
 なお、登記しえない事項は登記なくして第三者に対抗できる、と解する見解によると、登記しえない事項については、登記なくして第三者に対抗できることになります。

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通行地役権を設定するには
承役地の共有者は単独で通行地役権の設定ができるか
遺産分割協議中の一人を相手方として通行地役権の設定はできるか
市街化調整区域内の農地を通行地役権の承役地にすることができるか
黙示の通行地役権が認められるのはどのような場合か
通行地役権はどのような場合に成立するか
通行地役権を時効取得できるか
土地賃借人に通行地役権の時効取得は認められるか
通行地役権を相続人が時効取得する場合被相続人の通行期間も通算できるか
通行地役権の設定に対価を要求できるか
通行地役権がある場合は自動車で通行できるか
通行地役権者は承役地上に自己の表札を設置することができるか
承役地を購入した場合に通行地役権はどうなるか
要役地を売ると通行地役権も移転するか
通行地役権が消滅するのはどのような場合か
通行地役権は通行の必要がなくなった場合消滅するか
共有者の一人が勝手に放棄した場合は通行地役権は消滅するか
通行に供されている共有地の分割請求はできるか
建物賃借人に通行地役権は認められるか
建物を要役地とする地役権の設定登記はできるか
通行地役権の登記申請手続はどのようにするか
市による通行地役権の時効取得と登記請求
要役地の共有者は自己の共有持分のために通行地役権設定登記の請求ができるか
共有に属する要役地のために通行地役権設定登記手続を求める訴えは共有者全員でしなければならないか
通行地役権を登記せずに第三者に対抗できる場合
通行地役権の設定登記なくして背信的悪意者からの転得者に対し通行地役権を対抗できるか
未登記通行地役権の当事者に交替のある場合
通行地役権者は承役地を譲り受けた者に対して通行地役権の設定登記を請求できるか
通行地役権に基づく請求訴訟はどのように行うか
私道は建築基準法上どのような制限を受けるか
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開発許可の取れない土地の評価はどうなるか
私道に固定資産税がかからないようにできないか
固定資産税の賦課行為行為は所有の意思の推定を破るか
私道の売買に伴う登録免許税は安くならないか
私道を公道に編入する場合の手続
建築基準法上の道路内の自動車通行を制限できるか
都市計画法一一条一項一号の道路の通行権
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道路位置指定によって第三者に通行権が生じるか
道路位置指定を受ける手続き
他人の申請によりなされた道路位置指定は取り消せるか
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二項道路とは
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私道で駐車を止めさせられるか
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