借地借家法の狙い

 従前の借地・借家関係における当事者の権利関係の調整は、旧借地法、旧借家法などを中心にしてはかられてきましたが、現在の借地借家法の狙いは、どのようなところにあるのでしょうか。

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 旧借地法、旧借家法は、いずれも大正10年(1921年)に制定された法律です。ともに昭和16年(1941年)に改正されて以来、平成3年(1991年)までの50年間、基本的枠組みは変わっていませんでした。
 しかし、この間、社会経済情勢は著しく変化しました。経済の発展にともない、土地・建物の利用に対する需要が多様化し、また都市化の進行に応じて借地権が高い価値を有するようになり、新たな宅地の供給が極端に減少しました。
 そこで、これらの状況に対応するため、現在の借地借家法は、より利用しやすい借地・借家制度の構築を目指して、契約当事者の公平な利害調整と、借地・借家関係の一層の合理化をはかっています。
 1. まず、借地・借家関係の多様化に対応するため、正当事由があれば更新され続けるという従前の画一的規制に例外を設けたことです。定期借地権および期限付借家制度の導入です。
 2. 次に、更新型の借地・借家関係についても、当事者間の利害調整を合理化したことです。借地権の存続期間が従前より短かくなったこと、正当事由の判断のための具体的事情を列挙したこと、地代・家賃の増減額請求は調停前置とされたことなどです。
 これらの改正により、借地・借家契約が利用しやすくなりますので、良好な借地・借家の供給増加が期待されます。
 なお、借地借家法は、既存の借地・借家関係の安定に十分配慮し、従前の借地人、借家人に不利益な規定は、既存の借地・借家関係に適用しないとしています。
 [借地借家法の制定経過]
 昭和16年の旧借地法、旧借家法の改正により、正当事由がないかぎり契約が更新されるという画一的枠組みが成立しました。
 しかし、30年代に入って、社会経済情勢の変化により、法律と現実の要請とにずれが生じました。昭和35年に、改正の試みがなされましたが、棚上げとなりました。
 その後、高度成長期を経て、経済規模が拡大し、さらに都市化・国際化がすすみ、大都市間の土地不足および土地価格の急騰という社会経済情勢の急激な変化が起きてきました。ことに借地権は更地の60%から80%の価値を有するようになり、土地所有者が新たに土地を貸すことが極端に少なくなりました。総務庁の調査によると、持家のうち敷地が借地であるものの割合は、東京では、昭和38年から昭和63年の間に47%から14%へと、全国でも、29%から9%へと低下しています。また、スーパーや外食産業などにおいて土地・建物の利用関係が多様化してきています。
 これらの変化に対応するため、昭和60年(1985年)から、借地・借家法制の全面的見直しが、法制審議会民法部会で始められました。民法部会が、平成元年3月公表した「借地法・借家法改正要綱試案」は、成立した借地借家法より改正内容を多く盛り込んだものでした。また、法制審議会が平成3年2月採択した「借地法等改正要綱」は、正当事由の改正内容については、既存の借地・借家関係に適用を認めるものであり、また契約更新後の期間などに関する改正内容については、適用の可能性を残したものでした。しかし、借地借家法はそれらをしりぞけ、既存の借地借家関係への不適用を明らかにしました。
 借地借家法は、平成3年9月30日に、「民事調停法の一部を改正する法律」とともに成立し、平成4年8月1日から施行されることになりました。
 [借地借家法の問題点]
 借地借家法は、利用しやすい借地・借家関係を実現しようとするものですが、改正経過で述べたように、既存の借地・借家人に不利となる借地借家の改正内容は、従前の借地・借家関係に適用しないこととされました。これは既存の借地・借家関係の安定を図ろうとするものでありますが、この結果、旧借地法・旧借家法の適用を受ける借地・借家関係と借地借家法の適用を受けるそれと2つの法律関係が併存することになります。この意味で極めて不徹底な改正であるといえます。
 しかし、年を経るにつれ、借地借家法適用の借地・借家関係が増加する一方、従前の借地・借家関係はしだいに減ってゆくでしょう。借地借家法適用の借地・借家関係が多くなりますと、人々の意識も変化し、例えば借地契約の更新のときの借地借家法による借地とする合意が、認められやすくなると思います。また、社会情勢の変化もあって、同じような借地・借家関係に、2つの法律関係が併存するという正常でない状況は、近い将来無くなるかもしれません。

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