借地の一部についての更新拒絶

 借地人のAは、借地の一部を駐車場として人に貸しています。近々、借地契約の期間が満了しますが、私は、この駐車場として使用している部分について明渡しを求め、ここで喫茶店を開業したいと考えています。このような、借地の一部についての更新拒絶はできないものでしょうか。

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 契約の更新を拒絶して借地人に土地の明渡しを求める場合、借地の全部について返還を求めるのが通常ですが、借地の一部についてだけ明渡しを求めることもできます。
 地主が更新拒絶をなしうる正当事由の有無については、地主と借地人双方の土地使用の必要性その他の事情について、それぞれ具体的に比較検討して判断されることは、すでに述べてきました。このことは、借地の一部の明渡しを求める場合も同様です。したがって、借地の全部については正当事由がない場合でも、その一部については正当事由があるとして、その一部についてのみ地主の明渡請求が認められる場合があります。その場合、他の部分については、契約が更新されます。
 更新拒絶における正当事由の有無の判断は、土地の所有権と利用権(借地権)との対立を、社会通念に照らし妥当な解決をはかろうとするものであるといえます。
 地主と借地人双方の必要性の事情を検討して、地主、借地人両者の利害の調和を図った結果、土地全部の明渡請求に対し土地の一部の明渡しを認めた判例があります(東京地判昭49.10.17判時779号71頁)。
 このように借地の一部に対して更新拒絶を認めることは、地主、借地人双方に土地使用の必要性が認められる場合に、双方の利害調節に役立っています。その場合、明渡しを認められる借地部分の利用状況も重要となります。例えば、明渡しを要求された部分を借地人が現に使用しているとはいえない場合(空き地となっているなど)などには、正当事由の認定にあたり、地主側に有利に働くといえます。この部分を明け渡したとしても、借地人の受ける影響は少ないと考えられるからです。
 ある判例では、地主側は3間しかないアパートに3代にわたる家族5人が同居しており、地主側が念願していたマイホーム建築のために借地の一部の明渡しを求めた場合に、これを認めたものがあります。その事例における借地人は、公租公課程度にすぎない低賃料で土地を賃借し、その所有する床面積124.58m2の居宅で親子3人が生活するという、地主に比べ恵まれた住宅事情にあること、借地の一部が空き地となっているという使用状況でした(札幌地判昭和53土25判時905号93頁、その他借地全部の明渡請求に対し空地部分にかぎり正当事由を認めた判例として、東京地判昭45.11.27判時626号64頁)。
 また別の判例では、地主、借地人の両者の土地利用の必要性について検討した後、土地の一部明渡しを認めたものがあります。その理由とするところは、借地人が長期にわたり低額な賃料で賃借し続けてきたこと、借地上の工場、倉庫などの配置などを合理化すれば、敷地全体を縮小して効率的な利用をすることが期待でき、またその縮小により借地人刊の営業が困難になるとは認められないというものです(東京高判昭54.3.28判時935号45頁、前記昭和49年東京地裁判決控訴審)。なおこの判決では、借地人が工場建物などを収去し再整備するには相当な費用がかかることや、その期間中工場としての機能はほとんど完全に麻縁し、少なからぬ損失をこうむることなどを考慮し、立退料の支払と引換えに明渡しが認められています。
 本問の場合、借地人が借地の一部を駐車場として人に貸しているということです。したがって、それによって得られる収入で生活を維持しているとしますと、借地の一部の明渡しといっても、借地人にとっては土地利用の必要性が高いといえます。それに関連して、駐車場として使用している借地の一部が、借他人の営業にとってどの程度必要なのかについて考慮しなければならないでしょう。その結果、正当事由の認定にあたっては、地主側にも土地利用についてのかなりの必要性が要求されるでしょう。
 以上のような事情を総合判断して、借地人の土地利用の必要性より、地主の必要性がより高ければ、地主の借地の一部の明渡しが認められることになるでしょう。ただし、借地全部の明渡しの場合と同様に、立退料の支払や代替地の提供の申入などが必要となるかもしれません。

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