借地人が破産したとき

 A社に土地を貸していますが、このA社が破産宣告を受け倒産してしまいました。地代も3か月分滞納になっています。このような場合、私はA社に対して土地の明渡しを求めることができるでしょうか。

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 A社に対し明渡しを求める方法としては、1.A社の地代滞納を債務不履行として契約を解除する方法と、2.A社の破産宣告を理由として解約申入れをする方法の2つが考えられます。
 まず、結論を言いますと、1.地代滞納の場合は、3か月程度の滞納では通常解除は認められませんので、明渡しを求めることはできないことが多いでしょう。2.の破産宣告の場合は、A社が借地上に建物を所有していない場合は、解約申入れ後1年経過すると契約は終了しますので明渡しを求めることができます。これに対し、A社が借地上に建物を所有している場合は、解約申入れの時から1年経過するまでの期間、解約申入れにつき、正当事由がなければ明渡しを求めることはできません。
 地代滞納を債務不履行とする解除に関して、学説や判例は、地代の滞納が地主との信頼関係を破壊する程度に至らなければ解除は許されないという基本的態度で一致しております。
 そこで、3か月分の地代滞納が、信頼関係を破壊する程度に至ったと判断すべきか否かが問題となります。判例によりますと、一般には3か月分程度の地代滞納では信頼関係が破壊されたとまではいえないことが多いようです。したがって、地代滞納を理由とする明渡請求は難しいという結論になります。
 破産宣告を理由とする解約申入れの場合は、A社が借地上に建物を所有しているか否かにより結論を異にします。
 まず、A社が建物を所有していない場合を説明します。
 民法621条は、借地人が破産宣告を受けたときは、賃貸借期間の定めのある場合でも、地主または破産管財人は民法617条の規定により解約の申入れをすることができると規定しています。そして、民法617条は、土地の賃貸借は、解約申入れ後1年経過することによって終了すると規定しています。
 A社が建物を所有していない場合は、これらの規定がそのまま適用されます。したがって、地主であるあなたは、A社の破産管財人に対し、解約の申入れをして、その1年経過後に借地の明渡しを請求することができます。
 この場合、破産宣告前の滞納地代は破産債権となるので、按分による一部配当しか受けられませんが、破産宣告後の地代については、破産法47条7号の適用あるいは類推適用により財団債権として随時の支払を受けることができます。
 次に、A社が建物を所有している場合を説明します。この場合も民法621条の適用を受けると考えてもよさそうですが、最高裁判所は、旧借地法時代ですが解約申入れの時から1年経過するまでの期間、解約申入れにつき正当事由がなければ、解約の効力は生じないとしています。
 その理由としては、1.旧借地法が契約終了に正当事由を要求していること(新しい借地借家法でも同じです。)、2.借地人の破産が直ちに信頼関係を破壊したとはいえないこと、3.破産宣告後の地代は財団債権として随時支払を受けることができるので地主に不利はないこと、4.借地人の破産という偶発的事実により、地主が大きな利益を受ける反面、破産債権者は配当の原資たる重要な資産を失うことになり、著しく不当な結果になることなどがあげられています。
 学説もおおむねこの判例を支持しています。
 借地借家法の下でも、この最高裁判所の立場は、維持されるものと思われます。
 したがって、この場合は、正当事由の有無によって結論は異なることになります。
 正当事由があるということは、地主が借地契約の継続をすることによりこうむる不利益と借地人が借地契約の終了することによりこうむる不利益とを比較して地主の不利益が大きいと判断されることです。
 双方のあらゆる事情が判断の材料にされることになります。
 先程の判例も正当事由の有無に開し、自己使用の必要性のほか、破産宣告前の未払賃料の有無、その額、破産財団の賃料支払能力、開始された破産手続の推移、例えば和議または更生手続への移行、その成否の見込み、地主の立退料支払意思の有無、その額などの諸事情を考慮するべきだとしています。
 したがって、本問の場合もあなたとA社との前記の諸般の事情を総合して判断することになります。
 その結果、正当事由ありと判断されれば、A社に対し、明渡しを求めることができますが、正当事由なしと判断されれば明渡しを求めることはできません。

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