借地権の残存期間がわずかである場合

 Aに土地を貸し、Aはそこに住宅兼店舗を建て喫茶店を経営していますが、Aとの借地契約はあと1年半で切れます。しかし、最近、子供が後を継がないので、この店はBに売却するためBへの借地名義の書換えに応じてくれと申し入れてきました。私はAとの借地期限があとわずかですのでBへの名義書換えを断れるでしょうか。

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 借地人の譲渡の承諾の求めを、借地権の残存期間が短いということで地主が拒絶した場合、借地人は譲渡の許可を求める裁判を申し立てることになるでしょう。
 この場合、裁判所は許可をすることになるでしょうか。裁判所は許可の裁判をするにあたっては、他主に不利となるおそれがないかをはじめ、種々の事情を考慮しなければならないとされ、借地権の残存期間も考慮されます。
 しかし、考慮するといっても、ただ残存期間が短いだけで譲渡を不許可にすることは、ありません。借地人との間で、他主に契約更新を拒絶できる正当事由が備わっているかどうかが問題とされるのです。これは、普通借地権は、期間が満了しても正当事由がないかぎり契約は更新されるので、正当事由がない場合は、借地権が譲渡されてもされなくとも、土地が地主に戻ってこないことに変わりがないからです。
 したがって、このような場合に、譲渡が許可されないのは、残存期間が短く、かつ正当事由が備わっており地主が更新をしないことが確実なときにかぎると解されています。この場合は、譲受人との間であれば正当事由が備わっていないこともありえ、そうならば譲渡されることにより、本来なら戻ってくるはずの借地が戻ってこなくなってしまうので、譲渡を許可しないことによって、地主の立場を保護してしかるべきだからです。
 なお、定期借地権、建物譲渡特約付借地権、事業用借地権の場合は、契約の更新が認められず期間の満了したときに正当事由なしで、土地を明け渡してもらえます。そこで、これらの借地権の残存期間が短い場合の譲渡許可が、普通借地権の場合と同様に扱われるのか疑問が生じます。実例が生じていないので断言はできませんが、譲渡されても期間満了のときに明渡しを受けられることが保障されており、譲渡によって地主に不利益を及ぼすことはないので、残存期間が短いことだけを理由に、譲渡が許可をされないという取扱いは、なされないのではないかと思います。
 そこで、あなたの承諾の拒絶が意味をもつのは、Aとの間で正当事由があるときにかぎられます。それでは、正当事由はどんな場合にあると認められるのでしょうか。
 正当事由については、今回の借地借家法で改正が行われました。新しい借地借家法によると、正当事由の判断基準として、次のものがあげられています。
 1. 地主と借地人が土地の使用を必要とする事情
 2. 借地に関する従前の経過
 3. 土地の利用状況
 4. 地主が借地権者に財産上の給付をする旨の申出
 旧借地法が、正当事由を「土地所有者が自ら土地を使用することを必要とする場合その他正当の事由ある場合」としていたのに比べ、借地借家法では基準が多くかかげられ明確になっています。
 問題は、内容まで違うのかということです。立法担当者は、従来旧借地法のもとで判例でとられていた基準を借地借家法にかかげたものにすぎず、内容は同じものだ、と説明をしています。
 しかし、法文が変わったので、既存の借地人が正当事由が広がるのではないかという不安を持つこともあるので、そのような不安を感じさせないため、既存の借地権には借地借家法の正当事由の条文は、適用されないことになりました。
 本問ではAの借地権は普通の借地権と思われます。そこで、正当事由が問題となりますが、事案の詳細が不明のため断定はできませんが、借地人が土地の使用を必要とする事情なども無視できないので、正当事由が備わっているとみることは、難しいでしょう。したがって、裁判所も譲渡を許可する可能性が高いと思われます。
 そこで、あなたのとるべき態度として、第1にAと話し合いをして、名義書換料の支払を条件として承諾する方向で話をすすめたほうがよいでしょう。借地を買い取る交渉をしてもよいでしょう。
 それでも条件があわず交渉が決裂したときは、Aの申し立てる譲渡許可の裁判で解決がはかられることになります。

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借地契約解除をする際の地主の留意点
借地契約の更新を拒絶するときの正当事由
土地の使用を必要とする事情とは
借地に関する従前の経過とは
土地の利用状況とは
借地借家法の財産上の給付とは
居住のため土地を必要とする場合と正当事由
借地人と不仲のときと更新拒絶
土地使用に公共性のある場合と正当事由
営業のために土地を必要とする場合と正当事由
地主の変更と正当事由
マンションの建設と正当事由
転借人に直接貸すことを理由とした賃貸借契約の更新拒絶
借地の一部についての更新拒絶
借地期間満了前の更新拒絶
更新拒絶の異議申立は契約期間満了後いつまでに行うか
建物が存在していない場合の更新請求
借地を返還してもらえるときは
借地人が破産したとき
定期借地権者が破産したら
建物譲渡特約付借地権
建物譲渡特約付借地権の譲渡価格の算定
立退料とは
立退料の支払義務
更新料とは
更新料の支払義務
更新料の免除と契約内容の変更
借地権の譲渡と地主の承諾
名義書換料とは
定期借地権などの譲渡
定期借地権付住宅は譲渡できるか
建物の滅失と借地権の譲渡
借地権の転貸と地主の承諾
地主の承諾にかわる許可の裁判
係争中の借地上にある建物の譲渡の防止方法
借地権の一部譲渡の許可申立て
賃貸人に不利となる場合の承諾の可否
借地権の残存期間がわずかである場合
土地管理人のした借地権の譲渡の承諾の効力
借地権の譲渡と転貸の承諾の時期と方法
共有土地上の借地権の譲渡と転貸の承諾
多額の権利金をとった場合と黙示の承諾
借地契約を解除した場合の地主と転借人の関係
借地契約の満了と転借権
転貸借の更新と正当事由
転貸借の終了と正当事由
借地上の建物の譲渡担保と無断譲渡
担保のために他人名義で登記した建物と借地権
借地権付分譲マンションの無断譲渡
更地が無断譲渡された場合と契約の解除
借地の一部を無断転貸した場合と契約の全部解除
借地権付建物の競落と借地権の譲渡
転借人が土地の所有権を取得した場合
無断転貸にもとづく借地契約の解除権の消滅時効
複数の借地上に1棟の建物を建築できるか
等価交換をするときは地主の承諾が必要か
地主の借地権優先譲受申立権
地代不払による契約解除と買取請求
契約解除後の建物譲受人からの買取請求
買取請求の対象物
数人の所有地にまたがる建物の一部の買取請求
建物共有者の1人からの買取請求
更新拒絶をしない場合の買取請求
定期借地権などの期間満了と買取請求
転借人の建物買取請求権
建物が買取請求後や引渡前に滅失したときに誰が負担するか
地主の異議の申入れを無視して建てた建物の買取請求
更新拒絶がない場合の建物買取請求
抵当権付建物の買取請求
無断譲受人が増改築をした部分の買取請求
借地人の法人化と無断譲渡
転借権が無断譲渡された場合と契約の解除
長い間放置した無断譲受人からの買取請求
建物買取価格の算定
再築した建物の買取価格の算定
建物買取請求権の消滅時効
買取請求権の行使時期
借地上の費用の償還請求
買取請求権行使後の請求者の敷地占有
相続による地代の請求の相手方
内縁の妻と借地権の承継
地主の死亡と地代の受領権者
相続と保証人の責任
共同相続人の1人が借地権を得る場合
土地収用と借地権
強制収用と借地権の補償
収用補償と借地権
土地区画整理と借地権
仮換地指定と借地権
都市再開発と借地権
土地不動産の有効活用の実務
都市計画の目的と基本理念
開発許可制度
第一種市街地再開発事業の測量と調査の手順
土地区画整理事業とは
借地借家法の狙い
借地期間を定めない場合
建物を賃借するときの法律
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建物の二重賃借人間の優先関係の判断基準
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家屋を新築するときは、境界からどれだけ離すべきか
通行地役権を設定するには
分譲マンションの共用部分の修繕費用の分担