借地の一部を無断転貸した場合と契約の全部解除

 不動産業者Aが貸家を3軒建てるというので所有地を貸しました。ところが、建てた貸家の1軒は知人Bに売却していることがわかりました。このような場合に借地の一部の無断転貸を理由にAとの借地契約の全部を解除できないものでしょうか。

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 借地人が、地主に無断で借地権を他に譲渡あるいは転貸した場合、地主は借地契約を解除することができますが、借地人の行為に他主に対する背信行為と認めるに足りない特別の事情があるときは、地主は借地契約を解除できないとされています。
 Aは3軒建てた貸家のうち、1軒を知人に売却したということですが、家を売却すれば通常は敷地使用権である借地権もそれにともなって譲渡あるいは転貸されたものと考えられますから、Aに背信行為と認めるに足りない特段の事情がないかぎり、あなたはAとの借地契約を解除することができます。
 これまで判例で、背信行為と認めるに足りない特段の事情とされたものとしては、譲渡あるいは転貸の前後で借地の使用形態に変化がない、賃料の実質的負担者に変化がない、転借地人(会社)の経営の実権は借地人が握っている、賃料の支払能力に変化がない、借地人と転借地人は親子であり、借地権の譲渡は生前の相続に近い、借地人と転借地人は夫婦で、夫が自分の持分である2分の1を妻に譲渡したにすぎない、転借地人には資力があり背信的意図がなく、相当の賃料値上げ、名義書換料の支払に応じる旨を表明している、地主は真の意図は承諾料のつりあげにあるなどがあります。
 あなたの場合も、解除が認められるか否かは、これら特段の事情がどの程度あるかにかかっているといえます。
 Aはすでに建っている建物をBに譲渡したのですから、譲渡の前後で借地の使用形態にはほとんど変化がなく、解除が認められれば、建物は取り壊されることになるのですから、裁判を起こした場合、裁判所は解除を認めることにはある程度慎重になると思います。
 ところで、Aが売却したのは3軒のうち1軒だけですから、借地権も一部だけ無断譲渡あるいは転貸したということになります。
 このように借地の一部を無断譲渡あるいは転貸した場合、借地契約の全部を解除することができるでしょうか。
 この点は、一部について無断譲渡あるいは転貸がされたとしても、借地契約は1個なのだから、特別の事情の存在しないかぎり、借地契約の全部について解除することができるとされています(東京高判昭40.1.26東高民報16巻1号3頁、最判昭42.12.8判時506号38頁)。
 もっとも、特別の事情を認め、一部についてのみ解除を認めた判例として次のものがあります。
 1. 無断譲渡された一部の土地は、公道とは反対の価値の低い土地で、全体の17%の面積を占めるのみあり、また借地人は地主の承諾が得られると思い、名義書換料として相当の金員の支払を予定していた(最判昭46.22判時636号47頁)。
 2. 借地契約後、借地人が多数の建物を建築し多数の者に売却した。地主も借地権の転貸を個別に承認していたが、転借地権のひとつが無断譲渡された。無断譲渡された部分は、224坪のうち約32坪にすぎない(大阪高判昭46.11.25判時660号51頁)。
 結局あなたの場合、Aが借地権を無断譲渡あるいは転貸した以上、借地契約の全部を解除できるのが原則ですが、Aに前述の特別の事情があるときは解除できず、また解除が認められる場合でも、前述の特別の事情があるときは、一部についてのみ解除が認められるということになるでしょう。

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