複数の借地上に1棟の建物を建築できるか
私と弟は地主Aから隣接する土地を別々に借りています。この2つの借地上に共同で1棟の建物を建てたいと思いますが、地主Aの承諾は必要でしょうか。
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地主の承諾が必要です。地主の承諾なくして、複数の借地上に1棟の建物を建築することはできないと解されます。
地主との間には、兄と弟2つの契約があります。契約書などにより、その2つの契約内容の確認が必要ですが、「増改築をするには地主の書面による承諾を要する」などという、増改築制限の特約があるかどうかです。
この特約がある場合には、増改築をするには地主の書面による承諾が必要です。この承諾を得ないまま増改築を行うと、借地契約違反(債務不履行)として、地主から借地契約を解除されるおそれがあります。
また、建物の種類(住宅・店舗など)、構造(堅固な建物か堅固でない建物か)、規模(床面積・階数など)、用途(居住用・事務所用など)について、借地契約に制限がある場合に、それと異なる借地条件に変更するには、地主の承諾が必要です。地主の承諾を得ないまま借地条件を変更すると、借地契約違反(債務不履行)として、地主から借地契約を解除されるおそれがあります。
増改築制限の特約があり、増改築について地主の承諾が得られない場合には、借地人は、地主の承諾に代わる許可を裁判所に求めることができます。そして、裁判所は、土地の通常の利用上相当であると認めるときは、地代などの借地条件を変更したり、一定の金銭給付を命じるなどして、双方の利害を妥当に調節し、借地人に増改築の許可を与えることができます。
建物の種類・構造・規模または用途を制限する特約があり、その特約と異なる借地条件を変更するについて地主の承諾が得られない場合には、借地人は地主の承諾に代わる許可を裁判所に求めることができます。そして、裁判所は、法令による土地利用の規制の変更、付近の土地利用状況の変化その他の事情の変更により、現に借地権を設定するにおいては、その借地条件と異なる建物の所有を目的とすることが相当であると認めるときは、地代などの借地条件を変更したり、一定の金銭給付を命じるなどして、双方の利害を妥当に調節し、借地人に借地条件変更について許可を与えることができます。
地主の承諾なくして、借地人の異なる複数の借地上に1棟の建物を建築することはできません。
増改築制限特約や建物の種類・構造・規模・用途の制限特約がある場合と同様、地主の承諾に代わる裁判所の許可を求められるかどうかですが、これは、以下のとおり、できないものと解されます。
複数の借地契約がある場合には、地主の承諾に代わる裁判所の許可の制度は、それぞれの契約について個別に適用の可否が決められるべきであって、複数の借地契約全体について決められる性質のものではないからです。
本問の場合も、契約は2つあり、期間、地代の額、更新料の有無・額、敷地の面積・容積率・建ぺい率・道路付け、既存建物の内容などが異なるはずです。したがって、かりに、複数の借地上への1棟の建物建築を可とすると、借地人相互間の利害調整が必要になるところ、借地借家法は、地主と借地人間の利害調整を考えているだけで、借地人相互間の利害調整は全く考えていません。
また、複数の契約全体について地主の承諾に代わる裁判所の許可を認めることは、個々の契約に対する地主の正当事由に基づく更新拒絶権にも重大な影響を与えることになるからです。
さらに、このような場合に地主の承諾に代わる裁判所の許可を認めると、建物は兄弟の共有または区分所有権の対象になり、敷地である借地については兄弟相互に転貸借の関係が発生します。このような複雑な関係の発生は、借地借家法が予想しないところだからです。
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