借地人の法人化と無断譲渡

 Aは私の貸した土地に店舗を建てて営業してきましたが、このほど個人商店を会社組織に変更しました。そのため、店舗の登記もB株式会社の名義に変更されていますが、この場合に私は、Aの借地権の無断譲渡を理由に、Aとの借地契約を解除することができるでしょうか。

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 借地人であるAは、地主であるあなたの承諾がないかぎり、借地権を譲渡したり、借地を転貸したりすることができず、あなたに無断で譲渡あるいは転貸したときは、あなたはAとの借地契約を解除することができます。
 ただ、借地権の譲渡あるいは転貸があっても、地主に対する背信行為と認めるに足りない特別の事情があれば、地主は借地契約を解除することはできないとされています。
 本問の場合、A個人名義の店舗がB株式会社名義に名義変更されたのですから、店舗の敷地利用権としての借地権も、AからB株式会社に譲渡あるいは転貸されたものと考えられ、この譲渡あるいは転貸が、あなたに対する背信行為と認めるに足りない特別の事情がないかぎり、あなたはAとの借地契約を解除できることになります。
 それでは、特別事情ありといえるでしょうか。
 この点は判例の傾向として、B株式会社がAの個人商店を会社組織に変更したものにすぎず、賃貸借の譲渡あるいは転貸の前後で、Aが使用しているということについて実質上の変更がないときは、背信行為と認めるに足りない特別の事情があるとして解除を否定しているようです。
 ただ、まったく同一の事案で、高等裁判所では背信行為ありとして解除を認めたが、最高裁判所では背信行為なしとして解除を認めなかったというように、具体的事案に応じて判断が微妙に異なることも考えられますので、Aとしては建物の名義をB株式会社に変更するについて、事前にあなたの承諾を得ておくか、承諾が得られないときは、借地借家法19条にもとづいてあなたの承諾に代わる裁判所の許可を求めておくのが賢明といえます。
 逆の言い方をすると、裁判所の許可を得て借地権の譲渡ができるのに、その手続をふまないで個人から会社に、形式的にせよ借地権を譲渡したというのは、それだけで背信行為ありと見られるおそれもあるのです。
 B株式会社が、Aと他の人との共同経営の場合には、共同経営の実態に応じて、背信行為の有無を判断することになります。営業の実権と賃借物の事実上の支配の程度がどうなっているかが、判断をするにあたっての決め手になると思われます。
 共同経営者が、Aに従属していると認められないかぎり、背信行為ありとして、あなたは借地契約を解除することができます。
 AからB株式会社に借地権が譲渡された当初は、借地契約を解除できない場合でも、その後にB株式会社の実態が変化し、Aとの実質的な同一性が認められなくなったときはどうでしょうか。例えば、B株式会社の代表取締役がAから他の人に変更したり、Aの株式が第三者に譲渡されたような場合です。
 このように人的、物的組織に変動を生じ、目的物の使用状況に著しい変更を生じた場合には、改めて無断譲渡、転貸の問題が生じるとされています。
 AからB株式会社に借地権が譲渡され、それがあなたに対するAの背信行為であったとしても、後にAが会社を解散して元の個人営業にもどしたような場合はどうなるでしょうか。
 その時までに、あなたが借地契約解除の意思表示をAに対してしていれば、解除は有効とされるでしょうが、解除の意思表示をしていないときは、解除をする以前に違法状態がなくなってしまったのですから、背信行為と認めるに足りない特段の事情が認められることも多いと思います。

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