小規模宅地の評価減特例

 昭和58年に評価基本通達が改正され、小規模の会社の株式を中心とした取引相場のない株式の評価方法の改訂が図られましたが、このことと対応して個人事業者の事業用または居住用の小規模宅地等についても以下の理由から評価に対して減額することが通達上明文化されました。
 事業用であれ居住用であれ、個人の小規模宅地等は生活基盤維持のため欠くことのできないものであって、その処分については相当の制約を受けること。
 事業用土地については、さらに、従業員や得意先等幅広い利害関係者を有しているところから、その処分にあたってはより強い制約を受けること。
 上記の理由から、事業用および居住用宅地等の200平方メートルまでの部分について評価減特例が適用されてきましたが、昭和63年改正により近年における異常な地価高騰による相続税負担の増大を軽減すべく、減額割合の引上げがなされるとともに、この特例による税負担の回避への対応として、適用対象の制限がなされました。
 地価は近年下落傾向にあるものの、依然としてその水準が高く、かかる地価水準に基づく相続税が、相続人の事業や居住の継続を阻害している状況も見受けられるため、減額割合の見直し及び制度全般の見直しが行われました。
 この特例の適用が受けられる宅地等は、次のすべての要件に該当する場合に限られます。
 建物または構築物の敷地として利用されている自用地、貸宅地、貸家建付地に該当する宅地または雑種地の一部であること(農地および採草放牧地は除かれます)。
 棚卸資産およびこれに準ずる資産でないこと。
 相続開始直前において、被相続人もしくは被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族(被相続人等という)の事業もしくは居住の用に供されていたものまたは、国の事業の敷地の用に供されているもの。
 特例の適用を受けられる宅地等を取得した人の全員が、小規模宅地等として200平方メートルまでの部分を選択し、同意した宅地等であること。
 小規模宅地等の特例は従来、相続開始直前の被相続人等の居住、利用状況により居住用・事業用(国の事業用)、その他に区分され、前者について一定の評価減額が認められてきました。居住用宅地、事業用(国の事業用)宅地について被相続人の用途のみならず、被相続人および相続人の相続開始前および相続開始後の居住・利用状況および所有状況を勘案し、減額割合の細分化が行われました。
 事業用宅地の範囲について昭和63年12月改正により、それ以前は事業に準ずるものを含めていたのを事業に準ずるものを除外し、特に不動産貸付けについては租税特別措置法通達により事業規模の大小等を勘案し、適用の有無を判断してきたのですが、改正により、事業に準ずるものとして事業と称するに至らない不動産の貸付け(国の事業用に貸付けているものは除く。)、その他これに類する行為で相当の対価を得て継続的に行うものと規定し、これらを事業用に含めることに、再度改められました。
 従来減額余地のなかった事業と称するに至らない不動産貸付けについて、50%減額の特例を受けられるケースも生じました。
 居住用について、配偶者が取得する場合と親族である取得者の場合とに区分し、前者および後者のうち改正により追加された適用要件を具備したものについては「特定居住用宅地等」に該当するものとして、減額割合の拡充(80%)を図るとともに、該当しない場合には減額割合は従来よりも縮小し、50%とすることとなりました。
 なお、宅地等の収得者のうちに、1人でも「特定居住用宅地等」の要件を具備する親族がいれば、当該宅地等は「特定居住用宅地等」に該当します。
 事業用について、親族である取得者の事業の継続性要件を追加した「特定事業用宅地等」を創設し、これに該当する場合には減額割合の拡充(80%)を図るとともに、該当しない場合には減額割合は従来よりも縮小し、50%とすることとなりました。
 なお、不動産貸付業、駐車場業、自転車駐輪禍業、準事業は、「特定事業用宅地等」には含まれないため、従来、租税特別措置法通達により実質基準・形式基準として判断され、事業的規模の不動産賃貸業とされていたものについても、減額割合は50%になります。
 同族会社の事業用宅地等の取扱いについては、従来の租税特別措置法通達の出資割合所有要件のほかに当該宅地等の取得者要件およびその後の所有および事業継続性を要件として、「特定事業用宅地等」と認められることとなりました。
 なお、宅地等の収得者のうちに1人でも「特定事業用宅地等」の要件を具備する親族がいれば、当該宅地等は「特定事業用宅地等」に該当します。
 従来、一の敷地が、居住用・事業用・その他に利用されている場合には、各々の利用状況に応じ、面積按分により減額割合を適用することとなっていました。
 改正では基本的考え方は同様ですが、一棟の建物の敷地の一部が特定居住用宅地等に該当する場合にはその建物の敷地については建物の利用状況により按分することなく、その敷地全体が特定居住用宅地等とされていました。
 改正により特定事薬用等宅地等の特例対象面積が引上げられたことに伴い、一棟の建物の敷地のうちに、特定事薬用宅地等とその他が含まれる場合には利用状況により、按分し、各々の面積区分を要することとなりました。
 被相続人等の居住用のために建物(被相続人または被相続人の親族の所有に係るものに限る。)の建築中または建物を取得後被相続人等が居住用とする前に相続が開始してしまった場合は、当該建物を相続または遺贈によって取得した者が、相続税の申告期限までに居住しているときは、居住用の宅地等に当たるものと認められます。ただし、建物の建築期間が相当の期間を要し、申告期限内に居住できない場合であっても、完成後には速やかに居住することが確実と認められるときには、これも居住用宅地等に当たるものと取扱われます。この取扱いは、相続の開始の直前において、被相続人等が自己の居住の用に供している建物(建築中の一時的居住は除く)を有していなかった場合に限り適用されます。
 このほか、当該建物のうち被相続人等の居住用とされる部分以外の部分があるときには、居住用宅地等とされるのは、建物のうちの居住用とされる部分に限られます。
 事業場の移転または建替えのため被相続人等の事業の用に供されていた建物を取壊し、または譲渡し、これらの建物に代わるべき建物(被相続人または被相続人の親族の所有に係るものに限る。)で被相続人等の事業の用に供されると認められるものの建築中に、または当該建物の取得後、被相続人等が事業の用に供する前に相続が開始した場合には、建築中または取得した建物を被相続人と生計を一にしていた親族または当該建物等若しくはその敷地となっている宅地等を相続等により取得した親族が、相続税の申告期限までにその建物を事業用として使用しているか、同申告期限までに事業用として使用していない場合であっても、それが建築に用する期間が建物の規模等からして相当期間を要するため建物が完成していないことによるときは、建物が完成後速やかに事業用として使用されることが確実であると認められるときに限り、事業用宅地等に当たるものと認められます。また、当該建物等のうち事業用部分以外の部分があるときは事業用宅地等とされるのは建物のうちの事業用とされる部分に対応する部分に限られます。
被相続人等の居住の用に供されていた宅地等で80%減額の対象となるのは具体的には次のようなケースです。
 配偶者が取得した場合には、その後の居住要件等もなく、無条件に80%減額となります。
 同居親族が、相続または遺贈により相続開始時から相続税の申告期限まで引続き当該土地を有し、居住を継続する場合には80%減額となります。
 配偶者または同居親族(相続人)がいない場合には、相続開始前3年以内に、自己または自己の配偶者所有の家屋に居住したことのない親族が、相続開始時から申告期限まで当該宅地を有する場合に80%減額となります。
 これは、相続人である子供が転勤等により他に借家、社宅住まいをしている場合等については、被相続人との同居および引続きの居住を要件とせず、80%減額特例の適用を認めるものです。
 相続開始前から当該宅地に居住し、被相続人と生計を一にしていた親族が相続開始時から申告期限まで引続き当該宅地等を有し、居住を継続する場合には80%減額となります。
 数人共同で相続した場合に、その内の1人でも以上の条件を満たす親族がいれば全体が特定居住用とされます。
 改正前は賃貸ビル等の一部に居住し、他を貸付けているような場合に、以上の要件を満たす親族が相続することにより、それ以前と異なり利用状況按分を要せず、そのビルの敷地全体が特定居住用とされましたが、改正後は、利用状況按分を要することとされました。
 被相続人の居住用家屋が被相続人所有でない場合には、土地の所有者、家屋の所有者(親族)および居住者(被相続人または生計を一にする親族)間の地代、家賃が無償か否かが判定上のポイントとなります。また、被相続人所有であっても、被相続人ではなく、生計を一にする親族が居住の用に供していた場合には、家賃が無償(相当の対価に至らない程度を含む)か否かがポイントとなります。
 賃貸マンション、ビルを建設する場合には、以上のような点に留意し、特定居住用宅地の適用を受けられるように配慮することも重要です。

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