使用貸借の税務関係

 通常、建物の所有を目的として土地を賃貸借する場合、土地の更地価額の50パーセント〜80パーセント程度の権利金の授受が行われ、毎月の地代が支払われています。仮に権利金の授受が行われず、通常の地代だけで借地権が設定された場合、税法では地主より借主に借地権の贈与があったものとみなすことが原則となっています。ただし、建物の所有を目的とする賃貸借といっても、工事現場の仮設ハウスなどのような一時使用のための土地の賃貸借については、権利金の授受がないのが普通ですので、こういった一時使用による権利金の認定課税はありません。権利金の認定課税が行われるのは、あくまで権利金の授受の慣行のある地域で、権利金の授受がなく、建物を所有する目的で借地権が設定された場合についてだけです。
 よく親の土地に子供が居住用の建物を建築するケースが見受けられます。この場合、親子間ですから、勿論権利金のやりとりもなく地代も無償といった形が多いでしょう。このような個人間の土地の無償使用の場合、権利金の認定課税はどうでしょうか。以前は貸主より借主への借地権の贈与があったとして課税していましたが、現在では、個人間の無償使用に対しては、認定課税は行わないことになっています。
 その理由は、個人間の土地の無償使用は、民法上の「使用貸借」に該当し、使用貸借に基づく土地使用権は、借地法等により保護を受けている借地権とは異なり法的保護は薄弱なものであり、当事者間の信頼関係に依存するものであるから、その財産的価値を評価することは妥当でないと考えられるからです。したがって、一切の課税関係が生じないのは使用貸借に限って言えることで、少しだけ地代を支払うということになれば、もはや使用貸借ではなく賃貸借となり、権利金の授受がなければ当然権利金の認定課税の可能性が出てきますので御注意下さい。逆に、地代は支払わないが固定資産税分ぐらい借主が負担する場合は、前にも述べましたが、無償使用の範囲ですので課税の問題は生じません。
 使用貸借における土地の使用権の評価の問題ですが、税法では財産として評価することは妥当でないと言うことですからゼロ評価としています。 したがって、使用貸借している土地の評価は、借地権付ではなく更地として評価されることになります。
 社長が個人の所有する土地を自分が経営する会社に無償で貸した場合、課税関係はどのようになるでしょうか。
 社長個人の課税関係を考えてみましょう。会社が個人の土地の上に無償で建物を建築することが、借地権の譲渡に該当するか否かということです。個人が著しく低い価額で法人に土地等(借地権を含む)を譲渡した場合、時価により譲渡があったものとみなす規定があります。無償ということは「著しく低い価額」と言えますが、このような使用貸借に基づく土地利用権が通常の借地権の設定とは言い難く、所得税で言うところの資産の譲渡には該当しないと考えられますので、このみなし譲渡の適用を受けないことになります。したがって、貸した社長には課税関係は一切生じないことになります。
 一方、借りた会社側の課税関係はどうなるでしょうか。法人の使用貸借に基づく土地の使用権は、借地法の適用がありませんので、借地権として考えるには無理があると思われます。やはり、その土地の使用状況、土地から受ける利益等の経済的価値によって土地使用権を考えざるを得ません。仮に、形式的には使用貸借であっても、実質的には借地権と同等の権利内容であるなら、借地権として会社に認定課税を行われることになります。さらに、貸主が社長でなく第三者であって、同じ条件で借りるとすれば、当然権利金を支払わなければ借りられないとすれぼ、会社はそれだけ利益を得たことになり、やはり課税の対象と考えられます。
 社長が権利金をとらないで、「相当の地代」をとって会社に土地を貸した場合はどうでしょうか。この場合は、会社に借地権の認定課税はありません。社長個人には地代が入りますのでその分所得税の対象となるだけです。
 相当の地代もとらない、権利金の授受もなしで会社に借地権の認定課税が行われることを回避する方法として、「土地の無償返還に関する届出書」を税務署に提出する方法があります。
 個人が自己所有の土地を同族会社等に貸した場合の相続税法上の土地の評価については賃貸借の場合と使用貸借の場合とで、取扱いが異なりますので留意が必要です。
 会社の土地を社長に無償で貸せば、課税関係はどのようになるでしょうか。同族会社ではよく見受けられるケースです。社長にしてみれば、個人の財産と会社の財産との明確な区別をしていませんし、土地を借りる際、会社に権利金を支払えぼ、借地権の譲渡ということで会社に税金がかかるという理由から、同族会社ではこのような例が多いのです。税法ではこのような取引につきどのように考えるのでしょうか。
 税法は、会社は営利を目的として一切の取引を行っていると考え、たとえ借主が社長であっても、会社と社長とは別人格のものであり、あくまで営利行為を前提にこの取引を考えます。すなわち、第三者に対する場合と同じように、まず借地権の設定に基づき権利金を収受したと見なし、その後社長個人に同額の金銭を支払ったと考えるのです。
 したがって、会社に対しては権利金の認定課税が行われ、社長に対しては賞与として所得税の対象とします。言うまでもなく、役員賞与は法人の所得の計算上、損金(経費)とはなりませんので、権利金相当額が会社にとってはそのまま法人税の対象となり、社長個人にとっては所得税の対象となり、二重に課税される結果となります。
 貸す相手方が従業員の場合は、課税関係は変わりませんが、一般従業員に対する賞与は原則として損金計上できますので、従業員個人に給与所得として課税の対象になるだけです。
 また貸す相手が会社とは関係のない個人であった場合、借主である個人に対しては「雑所得」もしくは「一時所得」として課税されますが、会社の方は、権利金の認定課税がされる一方で、支出したと見なされる権利金相当額が、一般には寄附金と見なされ、全額損金計上することができません。したがって、個人と法人の二重課税される結果となりますので、大いに気を付けて下さい。
 会社が認定課税を回避する方法として、「相当の地代」と「無償返還の届出」の二つがあることは前に述べたとおりですが、会社が個人に土地を貨す場合、この「無償返還の届出」を税務署に提出すれば、課税関係はすべてクリアーできると考えている人が多いようですが、あくまで「無償返還の届出」でクリアーできるのは、会社に対する権利金の認定課税だけであり、相当の地代の認定課税の問題は残っているのです。すなわち、会社は毎月、相当の地代を受け取ったものとして利益に計上する一方で、同額を相手が役員もしくは従業員であるなら個人に対する給与として処理することになり、個人はその分だけ給与所得が増加することとなります。借主の個人に借地権を発生させないためには、「無償返還の届出」を税務署に提出し、3年毎の相当の地代の見直しと認定給与の改訂が必要となりますので御注意下さい。
 親子会社間では、親会社の土地を子会社が無償で借り受けるケースもよくあります。このような法人同士の土地の無償使用につき税法は次のように考えています。
 基本的な考え方は、法人が個人に無償使用させる場合とまったく同様です。土地を貸した会社は、通常受け取るべき権利金を利益として認識し、同額借主の会社への寄附行為があったとし、寄附会の限度計算に従って損金算人類を計算し、超過したものは、法人税の対象所得となります。

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