借家権

 借家法は、借地法と同じく大正10年4月8日に公布・施行された法律であり、昭和16年および昭和41年に改正され、平成4年8月1日に施行されました。旧借家法の制定・改正は、社会の経済状況の変化に応じて、弱者たる借地人、借家人を擁護するとともに、拠って立つ社会の経済基盤を壊さないように配慮したものでした。したがって、債権たる賃借権・借家権を強化するような傾向の判断がなされてきました。
 借家権とは、債権たる賃貸借契約に基づいて賃借人が建物を使用・収益する権利であって、その権利の大要は「借地借家法」によって規定されています。ただし、建物を無償で使用・収益する使用貸借は借家権といえません。この「借地借家法」の保護を受ける建物とは、その構造上独立した状態にあることが必要ですので、いわゆる間借りは対象外ですが、ビルの一室・アパートの一室等は対象になります。
 家主が、期間の定めがある借家契約の更新を拒絶するため、あるいは期間の定めがない借家契約の解約の申入れをするためには、正当事由が必要であることは、借地契約と同様ですが、その正当事由の内容は、これまでの借家法では、「貸主が自らその建物を使用する場合その他正当の事由がある場合」と示されているにすぎません。 したがって、何か正当事由に当たるかは、旧借地法における正当事由と同様、多くが裁判所に委ねられているために、その内容が不明確であるという批判がなされていました。
 現実の訴訟案件では、当事者双方の事情などさまざまな事情を総合的考慮して正当事由の有無を判定しているのですが、規定上明らかではありません。借地借家法では、このような批判に応えて、現在の訴訟での扱いに即して正当事由の内容をもう少し明らかにするために、その基本となる事項を示しています。
 賃貸人(家主)および賃借人(借家人)が建物の使用を必要とする事情、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況、建物の現況、賃貸人(家主)が財産上の給付をするという申出をしたときは、その申出等が考慮されることとされています。
 「賃貸人および賃借人が建物の使用を必要とする事情」としては、家主が建物を返してもらってそれを住居などとして利用する必要性がどの程度あるか、そこを利用している借家人が他に利用することができる建物があるかなどが検討されます。建物の利用といっても、生活に利用するか事業に利用するかで、必要の程度には違いがあるとみられるでしょう。建物の使用を必要とする賃貸人は、代わりの建物を見つけて提供することや立退料を提供することも挙げられますが、これは別に「財産上の給付をする旨の申出」として規定されています。
 建物の家賃は、土地もしくは建物に対する固定資産税等の負担の増加により、土地もしくは建物の価格の上昇により、近隣の同じような建物の家賃に比較して不相当になってきた場合には、契約の条件に拘らず、賃貸人は将来に向かって家賃の値上げを請求できます。しかしながら、家賃の値上げは当事者同士の話合いによって決まるのが原則ですが、賃貸人の値上げ請求に対してどうしても折合いがつかない場合には、賃借人は最寄りの法務局に家賃相当額と思われる金額を供託することになります。その結果、賃貸人としては、再度話合いによって解決するか調停ないし訴訟にもっていくことになります。借地借家法においては、紛争処理の解決のため調停前置の制度を採用しています。
 特殊な借家契約は旧法に定めのなかった確定期限の借家契約を新しく制度化しています。「賃貸人不在期間の借家契約」「取り壊し予定建物についての借家契約」について契約の更新がない期限付借家の契約が締結できるようになっています。

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