被災建物に係る借地権

 震災では都市部の木造住宅はじめ中高層ビルやマンション等も多数倒壊し、また震災により発生した火災による被害は広範囲にひろがっています。被災者の半数を超える方々が借地または借家人であり、復興計画のなかにおいて、賃借人と貸主との権利調整が重要な課題となっています。
 震災により建物が滅失した場合においても、借地関係は終了しません。建物の滅失は借地契約には直接に影響を与えないのです。
 仮に、建物が滅失した場合は、借地権が消滅するとの特約が定められていたとしても、この規定は借地権者に不利なものとして無効と解されています。この条文をうけて借地契約において、賃借人所有の建物が滅失した場合は、当該建物を賃借人が再び建築するのかどうか、再建築するならどのような建物を再建築することになるのか、賃主とどのように手続きを行うかが、残りの借地期間との関係で問題となってくることになります。
 政令指定地域においては、建物が滅失したと判断される場合は、罹災都市借地借家臨時処理法が適用される関係で、建物が滅失したと判断されない場合と比較して、賃借人の権利関係は次の条文により、その取り扱いに差異が生じます。
 借地権の対抗要件(臨時処理法第10条)
 借地権が賃借権の場合、賃借権の登記のほか実際上は、借地権を第三者に対抗するために建物の登記がなされていますが、建物が滅失した場合は、建物の登記が無効となってしまいます。 しかし、臨時処理法は、建物の滅失によって登記が無効となっても、政令施行の目から5年間は、土地の買受人等の第三者に対し、建物の登記や借地権の登記がなくても従前の借地権を主張できるとしています。また第10条が戦災による家屋焼失者を救済し、住宅難を解消するのが目的であることから第10条にいう賃借人には、震災前から建物の登記も賃借権の登記もしていなかった賃借人も含まれるとされています。
 借地期間の延長(臨時処理法第11条)
 建物が滅失したと判断される場合、臨時処理法が適用されると、政令施行の日に借地権の残存期間が10年未満の借地権については、一律10年に延長されます。もちろん、賃貸人と借地人の合意によって、10年を超える期間を定めることは自由ですが、10年未満の期間を合意することは無効とされています。
 借地権の消滅(臨時処理法第12条)
 賃借人が、借地上に建物を再築して借地権を存続させる意思があるか否かについて疑問があるなどの場合は、土地所有者は政令が施行された日から2年以内に借地人に対し、1ヵ月以上の期間を定めて、その期間内に、借地権を存続させる意思があるのかないのかを申し出るように催告することができるとされています。そしてもし、借地権者からその土地所有者が定めた期間内に、借地権を存続させる意思があることを申出ないときは、その期間の満了の時において借地権は消滅するとされています。なお、借地をさらに転貸借しているような場合は、転借人においても借地権存続の意思がないことが、すべての借地権が消滅する要件とされています。
 借家人からの借地権譲渡の申入れ(臨時処理法第3条)
 借地権者が、その借地上の建物を借家人に賃借している場合に、臨時処理法の施行日から2年以内に、建物所有の目的でその土地を借地したいと希望する借家人から借地権譲渡の申出を受け、その申出を受けた日から3週間以内に、借地権者が、「建物所有の目的で自ら使用することを必要とするなどの正当事由」をもって拒絶の意思表示をしないときは、相当な対価において、借地権が譲渡されてしまいます。そして、この場合の借地権の譲渡については、賃貸人の承諾が擬制されてしまいますから賃貸人が承諾を拒否することはできないのです。このように臨時処理法の適用地域においては借地上の建物が滅失したと判断される場合は、当然に借地関係の終了ということはありませんが、土地所有者や借地権者の権利関係が相異しますので十分注意して下さい。

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