被災建物に係る借家権

 地震による倒壊、焼失の被害者の半数以上が借地または借家人であり、その権利関係の調整と円満な解決が都市復興の重要課題となっています。
 震災により入居している賃借人と大家との借家関係において、入居している建物が滅失した場合、賃貸借契約の目的物である建物が滅失しているので、一般的に借家契約は終了すると解されています。しかしながら政令指定地域においては借家人に次のような保護規定が設けられています。
 建物敷地の優先賃借権(臨時処理法第2条)
 建物賃借人は、土地所有者である賃貸人に対し、政令施行の日から2年以内までに、自らの費用で建物を再建して所有する目的で、賃借の申出をすることによって、罹災建物が存在した敷地の借地権が成立し、借地申出人が権利を取得することができることとしています。
 跡地に建築された建物への優先賃借権(臨時処理法第14条)
 罹災した建物が存在した跡地に、借家人以外の人により建てられる建物に対して、「建物の完成前までに」借家人自らが賃借したいと申出ることによって、優先してその建物賃借権を取得できるとしています。
 借地権譲渡の申出(臨時処理法第3条)
 借地上に存在する建物を賃借している借家人は、自らの建物賃貸人で土地賃借人でもある家主に対して、政令施行日から2年以内に土地の賃借権の譲渡を優先的に中出ることができます。そして、一般的には、土地賃借権の譲渡には、土地所有者である賃貸人の承諾がなければ賃借権の無断譲渡として賃貸借契約の解除の理由になるのですが(民法第612条)、臨時処理法は、特別法としての性格からこの場合の借地権の譲渡申出により借地権が譲渡された場合には(臨時処理法第4条)、土地所有者の承諾を不要としています。賃借人から適法に転借している転借人がいた場合は、その転借人もここにいう借主に該当します。
 優先借地権の申出(臨時処理法第2条)および借地権譲渡の申出(臨時処理法第3条)の拒絶
 具体的な権利関係において、借家人から借地権の優先取得(同法第2条)や、優先的借家権(同法第14条)を主張された家主、あるいは借地人が存在する場合の借地人への借地権譲渡による優先的借地権取得権を主張された借地人は、これを拒絶することはできないのでしょうか。借家人からのこれらの申出に対して、家主は、申入れがあった日から3週間以内に借家人に対して「拒絶の意思」を表示することができます。ただ、この場合の拒絶の意思表示には、「自ら使用することを必要とする場合その他正当な事由」が必要とされています。一般的には、この「正当事由」は、借地権の更新拒絶の場合などと同じであるといわれていますが、震災後においては、その土地の都市計画や利用価値、利用方法、借家人の罹災状況、土地所有者の罹災状況などの幅広い公共的な観点から、土地所有者および賃借申出人がそれぞれ土地を必要とする程度、その他双方の側の諸般の事情を比較考量して決すべきであると考えます。また、この申出は、「相当な借地条件」での申出でなければなりませんので、敷金や保証金、賃料の金額が相当でない申出は、適法な申出と認められない場合があります。なお、政令施行の日から2年以内でも、既にその土地を「権原により」建物所有目的で使用している者があるときは、借家人からこの中出をすることはできません。
 また、臨時処理法は、借家人のこの申出を、他に「優先して」認められるとしていますが、土地所有者が第三者との間で建物所有を目的とした賃貸借契約を締結し、既に第三者に土地を引き渡しているような場合は、その第三者への賃貸借が借家人への妨害工作であったり、あるいは、建物所有目的ではない駐車場目的の賃貸である場合を除いて、借家人からの申出を拒絶できるとされています。
 臨時処理法の運用にあたって、借地借家法の施行後まもない時期であり罹災後の借地借家関係が新法によることとなり、優先賃借権についても定期借地権等が考えられるので、罹災後の借地借家関係がより複雑化することも予測できることから、権利関係の円満な解決が望まれます。

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