借地権の譲渡に係わる課税

 税法上、譲渡とは有償であると無償であるとを問わずあらゆる財産権の移転を意味すると言われており、従って借地権も財産権の一種である以上その譲渡については当然課税の対象とされます。
 言うまでもなく、個人の場合は所得税法、法人の場合は法人税法によってその課税関係が律される訳ですが、借地権の設定の場合と違い譲渡については所得税法と法人税法の間の関連も比較的すっきりしているように思われます。
 また、借地権は税法上「土地の上に存する権利」として「土地」と同じ様な取扱をすることとなっていますので、所得税の分離課税、法人税の土地重課、あるいは圧縮記帳の各種特例等について、借地権の譲渡は土地の譲渡と同様の取扱をされることとなります。
 借地権を譲渡した場合、まずその譲渡収益の計上時期が問題となりますが、原則として引渡しの日によることとされています。ただし、譲渡契約の効力発生の日とすることもできます。この場合いわゆる停止条件付契約であれば、譲渡の時期はその条件成就の目以後となります。実際問題としても、例えば土地所有者の承諾が条件とされているような場合、土地所有者の承諾があるまでは引渡しがあったとは言えないと思われます。
 借地権を譲渡した場合の譲渡益は、収入金額から借地権の取得価額と譲渡のために要した経費(すなわち譲渡原価)を控除した額となりますが、このうち借地権の取得価額(所得税法上、取得費)にはおおむね次のようなものが含まれます。
 (a) 土地の賃貸借契約または転貸借契約(契約の更新、更改を含む)に当たり借地権の対価として地主または借地権者に支払った権利金、借地権の購入代価または立退料等の金額
 (b) 土地の上に存する建物等を取得した場合におけるその建物等の購入代価のうち借地権の対価と認められる部分の金額、ただし、その金額が建物等の購入代価のおおむね10%以下の金額であるときは、これをしいて借地権としないで建物等の取得価額に含めて減価償却をすることが認められています。
 (c)借地の改良のためにした地盛り、地ならし、埋立て等の整地に要した費用
 (d) 借地契約に当たり支出した手数料その他の費用
 (e) 建物等を増改築するに当たり土地の所有者等に支出した費用
 特殊な場合(借地権の無償取得等)
 (a)法人借地人の場合、法人借地人が借地権を無償または低廉取得等した場合において、借地権の時価とその実際に支払った権利金または購入代価の額との差額について受贈益としていわゆる法人税の認定課税を受けた場合には、その受贈益と認められた金額は借地権の取得価額に含まれます。
 (b) 個人借地人の場合、無償取得または低廉取得の借地権個人借地人が借地権を無償または低廉取得等した場合において、借地権の時価とその実際に支払った権利金または購入代価の額との差額について受贈益としていわゆる所得税の認定課税を受けた場合には、その受贈益と認められた金額は借地権の取得価額に含まれます。
 贈与、相続または遺贈によって取得した借地権、借地権を贈与、相続または遺贈によって取得した場合、その取得価額は贈与等のあった際に贈与者または被相続人等について、いわゆるみなし譲渡課税が行われているかどうかによって異なってきます。
 すなわち、みなし譲渡課税が行われている場合には贈与等があった時の時価が借地権の取得価額となり、みなし譲渡課税が行われていない場合には受贈者等がその借地権を、贈与者等が有していた期間を含めて引続き所有していたものとして取得価額を計算することとされています。
 上記の取扱は借地権に限らず資産一般についての規定であり、また贈与等の時期によって異なる取扱もあります。
 なお参考までに付言すれば、個人が個人から借地権を無償取得等したときに贈与を受けたものとして贈与税を課税された場合、所得税の課税を受けた場合と違いその受贈益を取得価額に含めることはできません。
 借地権の譲渡に際し、貸主に対し譲渡承諾料(名義書換料)を支払うケースがありますが、この場合の課税関係は次のとおりです。
 1. 譲渡人が支払った場合、個人の場合譲渡所得の計算上必要経費となり、法人の場合損金となります。
 2. 譲受人が支払った場合、借地権の取得価額(個人の場合、取得費)に含まれます。
 3. なお承諾料を受け取った貸主の方は、個人の場合不動産所得の収入金額とされ、法人の場合益金に算入されます。
 借地人が借地の上に存する自己の建物等を譲渡する場合、あるいは借地の返還をする場合において、通常収受すべき借地権の対価(立退料等)を収受しなかった場合の課税関係は次のようになります。
 法人が借地の上に存する自己の建物等を借地権の価額の全部または一部に相当する金額を含めない価額で譲渡した場合または借地の返還に当たり、通常当該借地権の価額に相当する立退料その他これに類する一時金を授受する取引上の慣行があるにもかかわらず、その額の全部または一部に相当する金額を収受しなかった場合には、原則として通常収受すべき借地権の対価の額または立退料等の額と実際に収受した借地権の対価の額または立退料等の額との差額に相当する金額を相手方に贈与したものとして取扱われます。
 従って、譲渡法人では寄付金、役員賞与または配当等として課税されることになります。また相手方においても受贈益の認定課税(法人であれば法人税、個人であれば所得税)を受けることとなります。
 ただし次のような場合には、立退料等を収受しないことも認められます。
 借地権の設定等に係わる契約書において将来借地を無償で返還することが定められていることまたはその土地の使用が使用貸借契約によるものである場合。
 土地の使用の目的が、単に物品飯場、駐車場等として土地を更地のまま使用し、または仮営業所、仮店舗等の簡易な建物の敷地として使用するものである場合。
 借地上の建物が著しく老朽化したことその他これに類する事由により、借地権が消滅し、またはこれを存続させることが困難であると認められる事情が生じた場合。
 個人借地人が借地権を無償譲渡等をした場合には、その相手方が個人であるか法人であるかによってその課税関係はかなり違ってきます。というのは、所得税法第59条によっていわゆるみなし譲渡課税の対象とされる贈与、低廉譲渡は法人に対してのものに限られているからです。
 法人に対して、借地権を無償譲渡あるいは時価の1/2未満の価額で譲渡した場合には、時価で譲渡したものとして譲渡所得が課税されます。この場合相手方法人は受贈益の認定課税を受けることとなります。
 個人間の贈与あるいは低廉譲渡については、いわゆるみなし譲渡課税は行わないこととされています。ただし、時価の1/2未満の譲渡によっていわゆる譲渡損が生じた場合この譲渡損はないものとみなされます。相手方の個人については原則として贈与税が課税されることとなります。
 なお、借地権の設定は通常の場合譲渡所得の基因となる資産の移転には含まれませんが、借地の返還は原則として譲渡に含まれます。ただし、無償返還契約がある場合等には譲渡に含まれないこととされていますが、その各内容は上記法人借地人の場合と基本的には同じです。

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