不動産所得の計算

 不動産所得は、土地の貸付けや貸家による所得などで、その範囲と具体例は次のとおりです。
 不動産の貸付け、土地の貸付けによる収入(地代)、アパートやテナントビルの貸付けによる収入(家賃)、不動産の上に属する権利の貸付け、設定、地上権、永小作権、借地権などの設定または使用による収入。
 船舶、航空機の貸付け、総トン数20トン以上の裸用船契約による収入
 事業的規模による不動産の貸付けによる所得、10室以上の賃貸マンションやアパート、5棟以上の貸家などを賃貸している場合には、不動産の貸付けが事業として行われていると判定されます。この場合には、事業専従者控除や、固定資産の損失の全額必要経費の算入が認められます。しかし、その収入は事業所得ではなく、不動産所得になります。
 アパート、下宿等の所得、アパート、貸間等のように食事を供さない場合は不動産所得となります。下宿等のように食事を供する場合は、事業所得または雑所得となります。
 借地権や地役権の設定等による所得、借地権や地役権の設定、借地権の転貸により一時に権利金や頭金などを受け取った場合には原則として不動産所得になります。しかし、借地権の設定に際しその価額の1/2超の対価を得た場合には譲渡所得になります。
 不動産所得の金額は、その年の不動産の賃貸収入等から必要経費を控除して計算します。
 「計算式」
 不動産所得の金額=総収入金額一必要経費
 総収入金額の内訳は地代、家賃、名義書換料、礼金、権利金、更新料などの不動産の貸付けに伴う収入が含まれます。名目のいかんを問いません。ただし、保証金や敷金などで預り金と同じ性格のものは、将来返還を要しますので、収入金額にはなりません。
 収入の計上時期、契約、慣習により支払日が定められているもの、その支払日
 支払日が定められていないもの、その支払を受けた日
 請求があったときに支払うべきものとされているもの、請求の日
 頭金、権利金、名義書換料、更新料等、貸付け資産の引き渡しを要するもの、引き渡しのあった日(契約の効力の発生の日)、引き渡しを要しないもの、契約の効力発生の日、敷金、保証金等、貸付け期間の経過に関係なく返還を要しないこととなっている部分の金額、貸付け期間の経過に応じて返還を要しないこととなる部分の金額がある場合のその返還を要しないこととなる部分の金額、返還を要しないこととなった日
 敷金等のうちに不動産等の貸付け期間が終了しなければ返還を要しないことが確定しない部分の金額がある場合において、その終了により返還を要しないことが確定した金額、貸し付けが終了した日
 臨時所得として税額の計算がされる場合、不動産等を3年以上貸付け、一度に多額の権利金等を受けた場合で、その金額が、契約による資産の使用料の2年分に相当する金額以上である場合の不動産所得は、臨時所得として特別な方法で税額の計算をすることができます。
 必要経費とは、その年分の不動産所得の金額から差し引くことができる必要経費は、総収入金額を得るために直接に要した費用の額およびその他業務上の費用の額とされています。
 必要経費は、現実に支払った金額ではなく、その年において支払うべき債務の確定した金額によって計算します。
 なお、支払うべき債務の確定した金額とは、債務が成立していること、事実が発生していること、金額が確定していること、の3要件を満たすものを指します。
 ただし、減価償却費や引当金などの例外があります。
 主な必要経費の計算、租税公課、必要経費に算入できる租税公課は、税金やいろいろの賦課金のうち、原則としてその年中に納付額が具体的に確定したものです。
 具体的には、業務用の土地・家屋などの登録免許税、不動産取得税、地価税、固定資産税、特別土地保有税、事業所税、自動車取得税などがあります。
 ただし、所得税、住民税、国税の加算税、延滞税、地方税の加算金、延滞金などは、必要経費に算入できません。
 地代、損害保険料等、業務用の土地の賃借料や業務用の建物について支払う損害保険料などは、必要経費に算入することができます。ただし、建物が居住用と賃貸用に併用されている場合には、居住用の部分の金額は除外する必要があります。
 地代や保険料を前払いした場合には、その年の属する期間に対応する部分を必要経費として算入し、残額は前払費用として翌年以後に繰り越します。
 ただし、前払費用については、通常支払うべき日以後1年以内の期間に相当する地代等を支払い、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する年分の必要経費に算入しているときは、この処理も認められます。
 未払い分については、その年の属する期間に対応する部分は必要経費に算入できます。
 修繕費、業務用の建物の通常の維持管理及び現状回復のため等に要した費用は、必要経費に算入されます。
 ただし、修理、改良その他いずれの名義をもってするかを問わず、資本的支出と見られる固定資産の使用可能期間の延長や、価値の増加をもたらすものは、固定資産の取得価額に算入しなければなりません。
 しかし、その判定は実務上困難であるため、一定の形式基準によって修繕費と資本的支出に区分している場合には、税務上はその区分によることを認めることにしています。
 その主な基準は以下のとおりです。
 少額または周期の短い費用については、次のようにその全額を修繕費として処理してよいことになっています。
 その1つの修理、改良などのためにかかった費用の額が20万円に満たない場合。
 その1つの修理が2以上の年数にまたがって行われたときは、各年ごとに要した金額が20万円未満ということになります。
 その修理、改良などがおおむね3年以内の期間を局期として行われていることが、過去の実績その他の事情からみて明らかである場合。
 形式基準による修繕費の判定、1つの修理、改良等のために支出した金額のうちに、資本的支出であるか、修繕費であるかが明らかでない金額がある場合で、次のいずれかの場合には、その支出した金額を修繕費として必要経費に算入できます。
 その金額が60万円に満たない場合。
 その金額が、修理、改良などの対象となった固定資産の前年末における取得価額(当初の取得価額にその後の資本的支出を加え除却分を除いた金額であり、減価償却累計額控除後の帳簿価額ではありません。)のおおむね10%相当額以下である場合。
 なお、少額または周期の短い費用については、たとえ資本的支出としての性格をもつ修理、改良等であっても、その支出金額を修繕費として取り扱おうとしているのに対して、形式基準は、修繕費か資本的支出か明らかでない修理、改良等の場合に限って適用される点に違いがあります。
 割合区分による方法を採用している場合には、以下のように計算します。
(a)修繕費
 支出金額の30%と前年末取得価格の10%のいずれか少ない金額
(b)資本的支出
 支出金額一修繕費(a)
 なお、この方法は継続して適用することが条件とされ、また資本的支出の金額に相当する部分を除却損として計上することはできません。
 業務用の土地、建物などの資金に当てるための借入金利子は、その計算期間のうち、その年に属する期間に対応する部分の金額を必要経費に算入します。
 ただし、業務開始前の利子については、固定資産の取得価額に算入することになります。
 また業務開始後であっても、その建物等が使用前であれば、使用開始前の期間に対応する借入金利息を固定資産の取得価額に算入することができます。
 なお、土地等に係る借入金利子の損益通算の制限については、損益通算を参照して下さい。
 供用部分の水道光熱費、消耗品費、保守点検費、不動産業者への委託手数料、広告宣伝費、業務上必要となった税理士報酬等、業務に直接必要なものは、必要経費として算入できます。
 家賃等が取り立て不能となった場合には、その損失は、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入できます。
 貸倒れは客観的に認識できる程度の事実があることが必要で、その判定は法律上の貸倒れ、事実上の貸倒れ等の要件が定められています。
 業務用建物、器具および備品などの減価償却資産は、毎年使用することによって、その価値が、物理的・経済的に減少します。したがって、そのような資産を取得するために要した額を、取得した年またはそれを除却した年だけの費用とするのは合理的ではありません。すなわち、その価値の減少は、毎年の収入に貢献しているわけですから、その減価償却資産を取得するための支出を費用の前払いと考えて、その減価償却資産が有効に業務の用に供される期間の費用として配分する必要があります。このような、減価償却資産の取得原価の費用配分の方法を減価償却といい、この方法により配分された金額を減価償却費として不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入します。

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