圧縮記帳と償却計算

 会社が土地や借地権を譲渡すると、その売却益に対して法人税が課されます。しかし、これでは、土地等を譲渡した対価で、別の資産を購入する、すなわち買換えをすることが困難になります。そこで、一定の要件を備えた買換えの場合には、法人税の負担を軽減する制度が設けられています。この制度を圧縮記帳と呼びます。
 そこでこの特定資産の買換えという特例制度について若干触れておきましょう。
 この制度は、法人が有する特定の資産を譲渡した場合において、譲渡した日を含む事業年度において、代わりに特定の資産を取得し、かつ、取得の日から1年以内に、その取得した資産をその法人の事業の用に供したときは、一定の算式により計算される圧縮限度額の範囲内で、新たに取得した資産の帳簿価額を減額することを認める制度です。
 特定資産の買換え特例のうち、主なものは以下のとおりです。
 譲渡資産の区分(全部で24区分に分類されています。)ごとに定められている買換資産を取得すること
 譲渡資産は固定資産であること(販売目的としての棚卸資産についてはこの特例を適用することはできません。)
 原則としては、譲渡した日を含む事業年度において、買換資産を取得すること
 なお、譲渡した日を含む事業年度において買換資産を取得することができなかった場合でも、原則として翌事業年度末までに買換資産を取得する見込みである場合には、特例の適用があります。
 買換資産は、その取得の日から1年以内にその法人の事業の用に供されること
 買換資産として土地を取得する場合には、原則として、譲渡資産の土地の面積の5倍までが圧縮記帳の対象とされること
 以上、代表的な要件について述べましたが、これらの要件を満たした買換えの場合に、圧縮限度額の範囲内で、新たに取得した資産の帳簿価額を減額することができるわけです。では、この圧縮記帳について説明しましょう。
 圧縮限度額の計算は以下の算式で計算されます。
 圧縮限度額=圧縮基礎取得価額×差益割合×80%(または60%、90%)
 したがって、圧縮できない20%(または40%、10%)分については、買換え時に課税されることとなります。
 圧縮基礎取得価額とは原則として買換資産の取得価額のことです(ただし、譲渡資産の対価の額が上限となります)。
 差益割合は、個々の譲渡資産ごとに計算することになっています。
 ただし、土地とその土地の上に存在する建物などを一括して譲渡した場合には、一括譲渡した土地と建物などを一括して計算することになっています。
 圧縮記帳の経理方法には、以下の3つの方法が認められています。
 直接簿価減額方式、損金経理による引当金方式、利益処分による積立金方式。
 そこで、代表的な直接簿価減額方式による圧縮記帳を、簡単な設例で考えてみましょう。
 Y社は新産業都市の区域外にあった土地を売却して、新産業都市内の土地を購入しました。
 土地帳簿価額1000万円
 売却価額1億円(譲渡経費はなかったものとする)
 土地購入価額1億5000万円とすると
 土地売却時現預金1億
 土地1000万円
 土地売却益9000万円
 土地購入時、土地1億5000万円、現預金1億5、000万円
 となりますが、このままでは土地売却益9000万円に対して課税されることになってしまいます。そこで
 圧縮記帳
 土地圧縮損7200万円/土地7200万円
 圧縮限度額7200万円=圧縮基礎取得価額1億円×差益割合0.9×80%
 によって、7200万円の圧縮損を計上し、土地の帳簿価額を直接減額することが認められるわけです。
 ただし、ここで注意して頂きたいのは土地の帳簿価額は7800万円になっているという点です。従って、将来、この土地を仮りに2億円で売却しますと、1億2200万円の売却益に対して課税されることになるというわけです。これを、新たに購入するのが、減価償却資産である建物を例にとると、よりおわかり頂けるでしょう。
 上記の例で、Y社所有の別の土地に、新たに建物を建築し、その建築資金が1億5000万円とすると、土地売却時現預金1億円
 土地1000万円
 土地売却益9000万円
 別の土地に建物を建築、建物 1億5000万円、現預金1億5000万円
 圧縮記帳、建物圧縮損7200万円、建物7200万円によって、建物の帳簿価額は7800万円になっているわけです。ここで注意して下さい。建物は、耐用年数に応じて減価償却という手続きを経て、費用化されていくわけですが、この基となる建物の帳簿価額自体が小さくなっていますので、これから毎期計上できる減価償却費が少ないのです。したがって、経費が少ないということは、その分利益が多くなるということに他なりませんから、圧縮記帳という制度は、法人税を完全に免れる(免税)というものではなく、法人税の課税される時期を先に延ぼしてもらうものであるという点をよく認識して下さい。

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