土地建物の譲渡所得の特例

 資産の譲渡による所得については、譲渡所得税が課税されますが、譲渡した資産が土地もしくは土地の上に存する権利(借地権、地上権など)または、建物およびその付属設備もしくは構築物であるか、これら以外の資産であるかによって課税方式が異なります。
 長期譲渡所得とは、その譲渡した年の1月1日において5年を超える期間所有していた土地建物等の譲渡による所得を長期譲渡所得といい、これは租税特別措置法に規定されています。
 長期譲渡所得とは、土地建物等の譲渡による収入金額から、その土地建物等の取得費およびその土地建物等の譲渡に要した経費を控除した金額です。この時、譲渡所得以外の所得のうち不動産所得の金額、事業所得の金額または山林所得の金額の計算上損失の金額がある場合、損益通算を行うことができます。また、所得税法第70条、第71条の規定により繰越控除が認められることになっている純損失の金額、雑損失の金額があるときは、その金額も控除することができます。
 所得金額の計算における収入金額、取得費および譲渡に要した経費の金額についてはここでは説明しませんが、取得費については次のような特例がありますので簡単に触れておきましょう。すなわち、昭和27年12月31日以前から所有している土地建物等を譲渡した場合、譲渡収入金額の5%相当額が取得費とみなされるというものです。ただし、実際の取得費等の金額が収入金額の5%相当額を超え、かつ超えることを証明できるときは、実際の取得費等の額を必要経費として控除することができます。なおこの規定は、法律においては昭和27年12月31目以前から所有している土地建物等を譲渡した場合に適用されることになっていますが、昭和28年1月1日以後に取得した土地建物等であってもこの規定に準じて計算してもよいこととされています。
 所得控除には、雑損控除、医療費控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、損害保険料控除、寄付金控除、障害者控除、老年者控除、寡婦(寡夫)控除、動労学生控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、基礎控除があり、所得金額から控除することができます。控除は一定の手順にしたがって行います。まず総所得金額(総合課税の利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、一時所得、雑所得および土地建物以外の資産を譲渡したときの譲渡所得の金額)から控除しますが、このとき所得控除額が総所得金額より多いと控除しきれない金額が生じます(所得控除の控除不足額)。所得控除の控除不足額は、土地建物等の譲渡所得の金額から控除することになりますが、その際は短期譲渡所得の金額、長期譲渡所得の金額の順になります。
 短期譲渡所得とは、その譲渡の年の1月1日において所有期間が5年以下の保有資産を譲渡したことにより生ずる所得をいいます。
 短期譲渡所得金額の計算は、長期譲渡所得金額と同じ考え方ですから、所得金額算出後損益通算、純損失・雑損失の繰越控除に関する規定も長期譲渡所得の場合と同じように適用されます。
 土地建物等を譲渡した場合の譲渡所得に対する課税方式は、租税特別措置法において、譲渡した土地建物等が長期保有資産である場合の長期譲渡所得と、短期保有資産である場合の短期譲渡所得とに区分し、それぞれ他の所得と分離して所得税額を計算することになっています。長期譲渡所得と短期譲渡所得とは、所得税法に規定される総合課税の対象となる資産の譲渡の場合においても同様に区分され、税負担に差がありますが、土地建物等の譲渡による所得についてはその負担の差がさらに大きくなっています。 したがって、譲渡した資産が長期保有資産に該当するか、短期保有資産に該当するかを判定することは極めて重要なことです。
 租税特別措置法に規定する長期譲渡所得とは、次に掲げる長期保有の土地建物等の譲渡による所得をいいます。
 長期保有の土地建物等(長期保有資産)とは、その資産を譲渡した日の属する年の1月1日において所有期間が5年を超えるものをいいます。
 この場合、その資産の取得の形態が次に掲げる場合に該当するときは、それぞれに掲げる日をその資産の取得の日として、その翌日から引き続き所有する期間をもってその資産の所有期間とします。
 交換により取得した資産で、その交換について所得税法の規定による交換の場合の課税の特例の適用を受けている場合、特例の適用を受けた譲渡資産を取得した日。
 相続、遺贈、贈与、低額譲渡により取得した資産である場合、被相続人、遺贈者、贈与者または譲渡者が取得した日。
 代替資産である場合、買換えなどの特例の適用を受けた譲渡資産を取得した日。
 短期譲渡所得とは短期保有資産を譲渡したことにより生ずる所得をいいますが、この短期保有資産とは次のような資産をいいます。すなわち土地建物等で譲渡した年の1月1日において所有期間が5年以下であるものおよび譲渡した年に取得したものとされています。
 また取得時期の判定は長期譲渡所得の場合と同様に行います。
 優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の軽減税率、その年の長期譲渡所得のなかに「優良住宅地の造成等のための土地等の譲渡」による所得がある場合は、優良な宅地の供給を促進するために税制上税負担を軽減する措置が講じられています。
 課税長期譲渡所得金額は、優良住宅地の造成等のための土地等の譲渡による部分の「特定課税長期譲渡所得金額」と、その他の長期譲渡所得金額であるところの「一般課税長期譲渡所得金額」とに分けられます。
 優良住宅地の造成等のための土地等の譲渡による所得として税負担の軽減措置の適用を受けることのできる所得とは、長期譲渡所得の起因となる土地等の譲渡で、次の要件に該当し、その該当することにつき一定の証明書によって証明された所得をいいます。
 これらの要件は詳細なものですから、軽減税率が受けられるかどうか事前に確認する必要があります。
 土地等の譲渡で国または地方公共団体に対するもの、またはその他これらに準ずる法人(日本道路公団等)に対する収用対償地に充てるためのもの
 住宅・都市整備公団、土地開発公社等の行う住宅建設または宅地造成の用に供するための土地等の譲渡
 土地の譲渡で収用交換等によるもの、この場合、措置法第33条「収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例」、措置法第33条の2「交換処分等に伴い資産を取得した場合の課税の特例」、措叙法第33条の4「収用交換等の場合の譲渡所得の特別控除」の規定の適用を受けたかどうかにかかわらずこの特例の適用を受けることができます。
 都市再開発法による第一種市街地再開発事業の用に供するための施行者に対する土地等の譲渡
 建築物の建築をする一定の事業を行う者に対する市街化区域等内にある土地等の譲渡で、その譲渡をした上地等がモの事業の用に供されるもの
 特定の民間再開発事業の用に供するための事業者に対する土地等の譲渡
 一団の宅地の造成を行う個人または法人に対する土地等の譲渡で、その譲渡をした上地等がその一団の宅地の用に供されるもの
 大都市地域における優良宅地開発の促進に関する緊急措置法の認定および都市計画法の開発許可を受けて一団の宅地の造成が行われる宅地開発事業の用に供するための事業者に対する土地等の譲渡。
 都市計画法の開発許可を受けて住宅建設の用に供される一団の宅地の造成が行われる住宅地造成事業の用に供するための事業者に対する土地等の譲渡。
 都市計画区域内の宅地の造成につき開発許可を要しない場合において個人または法人が造成する1000平方メートル以上の一団の住宅地造成(優良住宅地の認定を受けたものに限る)の用に供するための土地等の譲渡。
 都市計画区域内において行う25戸以上の一団の住宅または15戸以上または総床面積1000平方メートル以上の中高層の耐火共同住宅(優良住宅地の認定を受けたものに限る。)の建設の用に供するための土地等の譲渡。
 住宅または中高層の耐火共同住宅の建設を行う個人または法人に対する土地等(仮換地の指定がされたものに限る。)の譲渡のうち、その譲渡がその指定の効力発生の目から3年を経過する年の12月31日までに行われるもので、一定の住宅または中高層の耐火共同住宅の用に供するための土地等の譲渡。
 特定課税長期譲渡所得金額として税負担の軽減措置の適用を受けるには、その土地等の譲渡が「優良住宅地の造成等のための土地等の譲渡」であることの証明のため所定の書類を確定申告書に添付しなければなりません。この証明書類は前項で述べた譲渡の区分に応じて定められています。
 確定優良住宅地等予定地のための譲渡に対する特例の適用、宅地の造成または住宅の建設事業には長期間を要するものが多く、土地等の買取りがあった年中にその造成事業または建設事業が完成し、証明書類が交付されるとは限りません。この場合、その土地等がその譲渡の日から2年を経過する日の属する年の12月31日までの期間内に、「優良住宅地の造成等のための土地等の譲渡」に該当することとなることが確実であると認められることにつき「確定優良住宅地等予定地の証明書類」を確定申告書に添付したときはこの特例の適用を受けることができます。原則は2年ですが、造成規模や建築戸数等により住宅建設や宅地の造成に要する期間が通常2年を超えると見込まれる場合、または、災害等が生じた場合のようにやむを得ない事情がある場合には、最長8年以内の税務署長が認定した日の属する年の12月31日までの期間まで、申請により延長できることになっています。なお後日所定の届出書に確定優良住宅造成等事業を行う造成業者または建設業者より交付された開発許可通知書等の写しその他の必要書類を添付して納税地の所轄税務署長に提出することが条件となっています。

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