特定事業用資産の買替えの特例

 特定事業用資産の買換えの特例とは、個人が特定の事業用の土地、建物や構築物等を譲渡(譲渡資産)し、原則として、その資産を譲渡した年かその前年または翌年中に一定の事業用資産を取得(買換資産)して、取得の日から1年以内に事業の用に供したとき、譲渡利益のうち買換資産の価額の80パーセントに対応する部分については、課税の繰延べを適用する、という制度です。
 この特例制度は国土利用政策、土地政策等一定の政策的な観点から認められているものであり、東京、大阪、京都、名古屋の中心都市部の既成市街地内からこれらの既成市街地外への買換えや、騒音規制地域や大気汚染規制区域等にある工場等の移転を誘致するもの、既成市街地等内における立体買換え(いわゆる等価交換の制度)等、措置法第37条第1項1号より23号まで、23種類の態様があります。
 買換えの特例の対象となる「譲渡資産」と「買換資産」の範囲、特定の事薬用資産の買換えの特例の適用が認められるのは、事業の用に供している次表の「譲渡資産」欄に掲げる資産を譲渡して、その譲渡資産に対応する次表の「買換資産」欄に掲げる資産を取得した場合です。
 課税の繰延べ割合、特例の適用を受ける場合には、課税の繰延べ割合は80パーセントとされていますが、次に掲げる買換えに該当する場合の繰延割合はそれぞれの割合によります。
 構造改善事業等を営む個人の構造改善または事業転換のための買換えの場合・・・60パーセント
 工業再配置促進法の移転促進地域から誘導地域内への工場移転に伴う買換えの場合・・・90パーセント
 過度集積地域から特定の拠点地区への事務所等の移転に伴う買換えの場合・・・90パーセント
 特例による税額と課税の繰延べ、この買換え特例制度のしくみについて、具体的に金額で説明します。事例として、譲渡代金10億円、取得費・譲渡経費1億円、長期所有資産として計算してみることとします。
 一般の場合の税金、事業用資産の買換えの特例を受けない場合の税金は、次のとおり2億8828万円となります。
 譲渡所得金額は、10億円-1億円-100万円(長期譲渡所得の特別控除額)=8億9900万円となります。
 所得税と住民税の合計は、所得6000万円まで税率26%、6000万円超の部分が32.5%として計算すると、2億8828万円となります。
 買換え特例により、10億円の買換資産を取得した場合事業用資産の買換えの特例を受ける場合、この特例を適用しますと、買換資産を取得した金額については課税対象が本来の2割ですみます。つまり、本来の譲渡利益9億円のうち、8割部分の7億2000万円がなかったものとされ、2割部分の1億8000万円のみが課税されることとなります。
 譲渡所得金額は、上記で説明したように、(10億円-1億円)×0.2=1億8000万円となります。
 所得税と住民税の合計は、一般の場合と同じ計算により、 5460万円となります。なお、この場合には、長期譲渡所得の特別控除額100万円は使えませんので、御注意下さい。
 よって、この場合を比較した場合、買換え特例を適用した方が、税金が2億3368万円減少していることが分かります。
 そして、買換資産の価額が譲渡代金に満たない場合には、その割合に応じた部分の譲渡利益についてのみ、減少させることができることになります。
 ただし、なかったものとされた譲渡利益7億2000万円については、買換資産の取得価額もなかったものとされ、買換資産の税務上の取得価額は、10億円ではなく2億8、000万円と計算されます。つまりは、買換資産の取得価額は実際の取得価額ではなく、譲渡利益のうち課税されなかった金額を除いた価額となります。
 このため、買換資産が減価償却資産の場合には、取得費が少なく計上されている分だけその後の減価償却費が少なくなり、後年の所得が結果的に増加することとなるため、毎年の所得税で買換え時に課税されなかった部分の税金を納めることになります。また、買換資産を売却した場合、同じようにして譲渡利益が多額に発生する結果となり、その時点で繰り延べられた部分の税金を納めることとなります。結局のところ、この買換特例制度の効果は、課税を繰り延べる効果にしかすぎないことが、おわかりいただけると思います。
 前述した買換え特例の1号から23号までの態様のうち、特によく利用されている1号の既成市街地等の内から外への買換え、13号の市街化区域内または既成市街地等内における建物の高層化に伴う同一敷地上の権利の変換が行われる場合のその買換え、いわゆる立体買換えおよび、21号の10年超所有の土地、建物等からの置換えについて、簡単に説明します。
 既成市街地等の内から外への買換え、既成市街地等内にある事務所または事業所(福利厚生施設を除きます。)として使用されている建物(その附属設備を含みます。)またはその敷地の用に供されている土地等を譲渡して、既成市街地等以外の地域(外国を除きます。以下同じ。)内にある次の資産の取得をした場合、買換え特例の適用が認められています。
 土地等(農林業用のものにあっては、市街化区域以外の地域内にあるものに限る。)、建物、構築物または機械装置(農林薬用のものにあっては、市街化区域以外の地域内にあるものに限る。)
 課税繰延割合は、80パーセントです。
 ここで、既成市街地等を具体的に示すと、次のとおりです。
 首都圏整備法第2条第3項に規定する既成市街地、市街化区域又は既成市街地等内での立体買換え
 市街化区域または既成市街地等内における立体買換えというのは、都市計画法で定められた市街化区域または既成市街地等の地域内にある土地等の所有者が土地を提供して、デベロッパーが地上4階(共同住宅は3階)以上の建物を建築し、建物の建築価額と土地の譲渡価額とが等価となるような状況にして、土地と建物とを交換する、というものです。
 この特例は、既成市街地の土地を高層化し土地の有効活用を促進するために設けられているものです。

copyrght(c).土地不動産の有効活用の実務.all; rights; reserved

土地不動産の有効活用の実務
都市計画法
建築基準法
土地区画整理法
大都市法と宅地造成規制法
農地法と生産緑地法
土地収用法
国土利用計画法と不動産売買
土地の届出制
土地取引の監視区域
遊休土地に関する規制
宅地建物取引業者
不動産登記制度
中間省略登記と問題点
不動産売買契約書
区分所有権
区分所有建物と登記
区分所有建物の登記
敷地権設定マンションの税法上の特例
借地借家法の成立
借地権
普通借地権
定期借地権
建物増改築承諾料と借地条件変更承諾料
借地権の譲渡と転貸承諾料
借地の更新料
借家権
被災建物に係る借地権
被災建物に係る借家権
借地権の譲渡に係わる課税
借地権の設定に係わる課税関係
借地権の設定に際し権利金の授受をしない場合の課税
借家権に係わる税金
登録免許税と不動産取得税
特別土地保有税
事業所税
固定資産税
固定資産税の軽減措置
都市計画税
地価税
土地の評価
不動産所得の計算
損益通算
青色申告
減価償却
優良賃貸住宅の割増償却
新築貸家の割増償却
支払利息の費用性
土地建物の一括取得の区分計算
定期借地権に係る保証金に対する課税
相当の地代
土地購入て_の仲介業者に支払った手数料と付随費用
支払利息の取扱
圧縮記帳と償却計算
法人税の特例圧縮記帳
土地建物の一括取得の区分計算
新規取得土地等の負債利子の取扱特例
社宅収入と適正賃料
所得税の全体的計算方法
譲渡所得税のあらまし
譲渡収入
資産の取得費
土地建物の譲渡所得の特例
居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例
居住用財産の譲渡所得の特別控除
相続等により取得した居住用財産の買替え特例
特定の居住用財産の買替え特例
居住用財産の買替えの場合の譲渡損失の繰越控除
特定事業用資産の買替えの特例
特定事業用資産の買替え特例
特定事業用資産の買替特例を受けるための申告
固定資産の交換の特例
土地区画整理事業に土地を譲渡した場合の譲渡所得の特別控除
住宅造成事業者に譲渡の特例
土地収用の場合の課税の特例
相続財産の譲渡と課税
保証債務の履行と譲渡
保証債務の特例
競売・代物弁済と譲渡
土地建物の譲渡事業所得、雑所得になる場合
消費税の納税義務者
法人の土地建物等譲渡の課税
土地の譲渡益に対する重課税
土地重課税制度の主な留意事項
土地建物の譲渡と課税上の特例
固定資産を交換した場合の課税の特例
土地収用の課税の特例
特定資産の買替えの課税の特例
事業用地の土地の交換による課税
法人の土地建物の譲渡と消費税
不動産M&A
土地類似有価証券の定義
株式売却の課税
不動産M&Aの売主側の利点
不動産M&Aの買主側の利点
M&A売買交渉
M&A契約
相続税と不動産の有効活用
土地宅地の評価
宅地の利用区分に応した評価
不動産購入による債務控除の利用
小規模宅地の評価減特例
自然発生借地権
使用貸借とは
使用貸借の税務関係
使用転貸借の場合
相続税の延納と物納
都市計画の目的と基本理念
開発許可制度
第一種市街地再開発事業の測量と調査の手順
土地区画整理事業とは
借地借家法の狙い
借地期間を定めない場合
借地契約解除をする際の地主の留意点
建物を賃借するときの法律
家主の変更と借家権の承継
借家権の相続
抵当権設定後の土地の短期賃借人に建物買取請求権は認められるか
建物の二重賃借人間の優先関係の判断基準
境界とは
家屋を新築するときは、境界からどれだけ離すべきか
通行地役権を設定するには
分譲マンションの共用部分の修繕費用の分担