競売・代物弁済と譲渡

 担保に供していた資産が、その対象となった債務の弁済ができない場合、競売に付されたり、担保物件を債務の弁済に充てられることがあります。
 競売の場合は、本人の意思ではありませんが資産の有償譲渡です。ただ、その代金が強制的に債務の弁済に充当され譲渡者の手許に残らないだけであり、所得税法上の収入金額を構成します。しかし、代金が手許に残らないために担税力がありません。
 一方、代物弁済とは、債務者が債権者の承諾によってその負担した給付に代えて物その他の権利等の給付をすることにより債務の弁済をすることです。すなわち、債務者は債権者に対し、資産等を譲渡し、その代金と債務を相殺する取引といえ、代物弁済も譲渡所得として、所得税法上の収入金額を構成します。この取引も、代金授受はなく債務の消滅だけですので、担税力があるとはいいがたいものです。
 所得税法において、資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難である場合における滞納処分、強制執行、担保権の実行としての競売、企業担保権の実行手続および破産手続という強制換価手続による資産の譲渡による所得、その他これに類するものとして政令で定める所得は所得税を課さないと定めています。
 類するものとして政令で定める所得とは、資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であり、かつ強制換価手続の執行が避けられないと認められる場合における資産の譲渡による所得で、その譲渡に係る対価が、当該債務の弁済に充てられたものをいいます。
 そして、代物弁済で次に掲げるものはこれに該当します。
 1. 債権者から清算金を取得しない代物弁済
 2. 債権者から清算金を取得する代物弁済で当該清算金の全部を当該代物弁済に係る債務以外の弁済に充てたもの
 清算金とは、代物弁済に係る資産の価額が当該代物弁済に係る債務の額を超える場合におけるその超える金額に相当する金額として債権者から債務者に対し交付される金銭その他の資産をいう。
 所得税法においては、取引そのものに担税力がないという理由ですべての競売・代物弁済等による資産の譲渡を非課税とせず、その範囲を限定しています。すなわち、資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難である場合のみ非課税としているのです。一般の売買による資産の譲渡と同様に原則的には、譲渡所得の課税の対象として扱っているのです。
 ここでいう資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難である場合とは、1.債務者の債務超過の状態が著しいこと、2.その者の信用、才能等を活用しても、その債務の全部を弁済するための資金を調達することが現在できないこと、2.また近い将来においても調達できないと認められることの要件を満たす場合をいうのです。これら1.、2.、3.の要件に該当するかどうかは、競売、代物弁済等による資産の譲渡がなされた時の現況により判定します。従って、資産の譲渡時点において、債務超過の状態でなく、その後債務超過の状態が著しくなったとしても、この非課税規定は適用がない一方、遂に、譲渡時点で1.2.3.の要件を満たせば、その後において偶然資力を回復して、債務の弁済が可能になったとして払この非課税規定は、適用されることになります。
 次に類するものとして政令で定める所得の規定で、その譲渡に係る対価が当該債務の弁済に充てられたものであることが要件としてあげてあります。この弁済に充てられたかどうかは、この譲渡の対価(ただし、譲渡に要した費用に相当する部分を除く。)の全部が、当該譲渡の時において有する債務の弁済に充てられたかどうかにより判定します。
 強制換価手続だけでなく、任意売却も非課税扱いとされるのは、任意売却が強制換価手続の執行と同じような情況で実施されることを前提としており、一部代金が他に流用される場合は、そうとは認められないぽかりではなく、担税力という面においても、まだ余力があることを示していることに外ならないからです。

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