相続税と不動産の有効活用

 相続税は、人の死亡を原因としてその死亡した者に帰属した財産を相続または遺贈により取得した者に、その取得財産価額を基として課する租税です。
 その課税目的は、相続に伴う過度な富の集中や社会的不均衡を排除すること、被相続人の生前の所得のうち税法上の特例などにより蓄積した財産を、相続開始の時点で清算させることにより所得税を補完すること、被相続人の蓄積した財産は、その者の生前の努力の賜とはいえ社会に負うところも大であると考えられるため、その一部を社会に還元させ富の再分配化を図ることにあるといわれます。
 相続税は、死亡した者の財産を取得した者に対して課税されますが、このような課税体系だけでは生前に贈与することにより相続税の回避を図ることが考えられ、租税負担の不公平が生じます。そこで、相続税法ではこれらの税負担を調整するために、贈与により財産を取得した者に対しては贈与税を課税することとし、これにより相続税を補完させる方法をとっています。
 贈与税は相続税の補完税であるところから、相続税に比べ課税最低限も低く、かつ、税率も高く定められており、税負担がより重くなるように定められています。
 相続税は、相続または遺贈(死因贈与を含む。)により財産を取得した者に課税されます。そこで、相続、遺贈とはどのようなことかについて、民法の相続に関する規定に従って説明していきます。
 相続とは、相続人が被相続人(死亡した者)の財産に属する一切の権利義務を承継することをいいます。そして、相続は人(自然人)の死亡により開始します。したがって、相続開始の原因は自然人の死亡であり、法人については相続の開始ということはありません。また、失踪宣告を受けた場合にも死亡したものとみなされ相続が開始されます。
 相続開始の場所は、被相続人の住所と定められていますので、他の場所で死亡してもその者の住所で開始されます。
 被相続人の財産を承継する相続人は、民法に定める相続人(法定相続人)のみです。 しかし、被相続人は、遺贈および死因贈与によって法定相続人以外の者にその財産を承継させることもできます。
 民法に定める相続人となる者は、配偶者、直系血族、兄弟姉妹であり、その相続の順位は次のとおりとされています。
 ・第一順位・・・子
 相続開始以前に子が死亡しているときは、代襲相続人であるその子の子または孫がなり、また、胎児がある場合には死産を除きその胎児が相続権を有します。
 ・第二順位・・・直系尊属
 子が一人もいないときは、直系尊属が第二順位の相続人になります。
 ・第三順位・・・兄弟姉妹
 子、直系尊属がともにいないときに限り相続人となります。代襲相続権は、この場合、子に限り認められ孫には認められません。
・配偶者
配偶者(婚姻届の出されている者に限る。)は、上位の順位とは関係なく常に相続人となります。
 相続分とは、相続人が数人いる場合、その共同相続人が相続財産に対して有する権利義務の承継の割合をいいます。
 法定相続分は、相続人が被相続人から財産を承継する際の原則的な相続分であり、民法第900条、第901条では次のように定めています。
 ・相続人が配偶者と子の場合
 配偶者・・・1/2
 子・・・1/2
 ・相続人が配偶者と直系尊属の場合
 配偶者・・・2/3
 直系尊属・・・1/3
 ・相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合
 配偶者・・・3/4
 兄弟姉妹・・・1/4
 子、直系尊属および兄弟姉妹が数人いる場合には、各自の相続分は均等となります。ただし、非嫡出子の相続分は嫡出子の1/2になり、父母の一方のみが同じである兄弟姉妹の相続分は、父母の双方が同じ兄弟姉妹の1/2になります。
 また、代襲相続人の相続分は、その直系尊属が受けるべきであった相続分と同じになります。
 相続が開始すれば、その効果は法律上当然に相続人に発生します。しかし、相続財産が資産より負債が多い場合などには、相続人は思わぬ負担に苦しむことになります。そこで、民法は、相続の効果を承認するか、放棄するかの選択を相続人に認めています。
 相続の承認には、「単純承認」と「限定承認」とがあります。単純承認とは、被相続人の一切の権利義務を無限に承認することであり、限定承認とは、相続人が相続によって得た財産の限度内においてのみ被相続人の債務および遺贈を弁済すべきことを留保して承認することです。
 相続の放棄とは、被相続人の財産に属した権利義務の承認を拒否する行為であり、相続を放棄すると、その放棄した者はその相続に関しては初めから相続人とならなかったものとみなされます。
 相続の放棄や限定承認をする場合には、相続開始があったことを知った日の翌日から3か月以内に、家庭裁判所で所定の手続をしなければなりません。この手続をしない場合には単純承認したものとみなされます。
 遺贈とは、遺言によってなされる財産の贈与をいいます。相続税法では、遺贈によって財産を取得した場合も相続税が課税されます。
 遺贈には、包括遺贈と特定遺贈とがあります。
 包括遺贈とは、特定の資産を指定せず遺産の2分の1というように割合を示して行うもので、その割合に相当する遺産の権利義務を承継します。
特定遺贈とは、遺産のうち特定の資産を指定して行うものです。
 なお、遺贈を受けた者はその遺贈を放棄することができます。
 遺言は、相手方のない単独行為であり、遺言者の死亡によってその効力が生じます。
 被相続人は遺言によって自己の財産を自由に処分できますが、そのため配偶者や親族が生活に困窮することは望ましいものではありません。そこで民法は、「遺留分」という制度を設け、被相続人の一定の近親者のために相続財産のうちの一定割合を留保すべきことを定めています。
 遺留分権利者となることができる相続人は、直系卑属、直系尊属および配偶者に限られており、兄弟姉妹には遺留分がありません。遺留分の割合は次のとおりです。
 ・相続人が直系尊属だけの場合・・・被相続人の財産の1/3
 ・その他の場合(兄弟姉妹は除く)・・・被相続人の財産の1/2
 したがって、遺言によって遺留分を侵害された法定相続人が、受贈者に対して遺留分減殺請求を行った場合には、その遺留分についての遺言の効力は失われます。
 死因贈与とは、贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与をいいますが、一般の贈与に贈与者の死亡という停止条件が付された贈与であるといえます。
 実質的には遺贈により財産を取得した場合と異ならないため、相続税法上は死因贈与も遺贈に含めて規定し相続税が課税されます。
 相続税の納税義務者は、原則として相続または遺贈により財産を取得した個人です。しかし、個人以外に人格のない社団または財団、公益法人等でも個人とみなされて納税義務者となることがあります。
 相続税の課税対象になる財産は、被相続人が相続開始の時に所有していた土地、家屋、借地権、立木、事業(農業)用財産、株式・公社債等の有価証券、家庭用財産、貴金属、書画、骨董、自動車、預貯金、現金など、有形無形を問わず金銭的に見積り可能な経済価値のあるすべての財産です。
 この場合、被相続人が取得した不動産で来登記のもの、被相続人が購入した株式や公社債で名義書換や登録をしていないもの、家族名義の預貯金など、被相続人の名義以外でも実質的に被相続人の財産と認められるものは相続財産となります。
 相続または遺贈により財産を取得した個人の住所が財産取得時に日本国内にあるかどうかにより、課税される財産の範囲が異なります。
 無制限納税義務者、相続または遺贈により財産を取得した個人が、財産を取得した時において国内に住所を有する者については、その取得財産が日本国内にあると国外にあるとを問わずその全部が課税対象となります。
 制限納税義務者、相続または遺贈により財産を取得した個人が、財産を取得した時において国内に住所を有しない場合については、その者の取得財産のうち国内にあるものだけが課税対象となります。
 本来の相続財産のほかに、相続税法上の規定により相続または遺贈により取得したとみなされる財産(みなし相続財産)も課税対象となります。
 みなし相続財産には次のものがあります。
 生命保険金等、被相続人の死亡により支払われる生命保険金、損害保険金などのうち、被相続人が負担した保険料に対応する部分の金額。
 退職手当金、功労金等、被相続人の死亡により支給される死亡退職金・功労金等で、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定した金額。
 生命保険契約に関する権利、被相続人が保険料を負担し、他の者が契約者である生命保険契約で、相続開始の時において未だ給付事由が生じていないものに関する権利の金額。
 定期金に関する権利、被相続人が掛金を負担し、他の者が契約者である定期金給付金額で、相続開始の時において未だ給付事由が生じていないものに関する権利の金額。
 保証期間付定期金に関する権利、郵便年金契約などの保証期間付定期金給付契約で、被相続人の死亡後に遺族が継続受取人になった場合の定期金の権利の金額。
 契約に基づかない定期金に関する権利、被相続人の死亡により支払われる定期金や一時金で、契約に基づかないものに関する権利の金額。
 被相続人の遺言により受けた次の利益、信託の利益を受ける権利、著しく低い対価で財産の譲渡を受けた場合の利益、債務の免除・引受・弁済を受けた場合の利益。
 非課税財産、被相続人の財産であっても、次のものは相続税法上非課税とされます。
 墓地、墓碑、仏壇、仏具、神棚、神典等、宗教、慈善、学術その他公益事業を行う者が取得した公益事業用財産、心身障害者共済制度に基づく給行金を受ける権利、相続人が受取った生命保険金等のうち次の金額500万円×法定相続人の数、相続人が受取った退職手当金等のうち次の金額500万円×法定相続人の数、相続や遺贈によって取得した財産を相続税の申告期限までに、国、地方公共団体、特定の公益法人に寄付した場合、災害により甚大な被害を受けた場合、特定の公益信託の信託財産とするため支出した場合、におけるその財産。
 被相続人の債務や葬式費用を負担した人は、その人の相続財産からその負担した金額を控除することができます。これを債務控除といいます。
 相続開始の時に、被相続人が有していた借入金、未払金等は当然に相続財産から控除できますが、次に掲げるものも債務控除の対象となります。
 相続開始の時に確定している被相続人の国税、地方税、その他の租税公課で未納のもの、その年の1月1日から被相続人の死亡の日までの所得に対する準確定申告の所得税額、保証債務のうち、主たる債務者が弁済不能の状態にあるため保証債務者がその債務を保証しなければならない場合で、求債権の行使が不能である部分の金額など。

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